前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

402.私の会社員時代、やってらんない記憶.80

次の「それは酷いんじゃない?」と思った事は、土地建物の税制である、買替え特例という法律です。これは法律自体はとてもいい法律だと思いますが、その次の世代の事を考えると、どうなのかなと思った事があったのです。この税制は、バブル期前後に盛んに用いられた法律であり、現在でも内容は少しスケールダウンしましたが存在している法律です。これも細かく説明すると長くなってしまうので、簡単に説明します。

まず、物件を売却する時、買った時の値段より高く売れた場合、その利益分から経費を引いた額に譲渡所得という税金が掛かるのです。今現在でも20%近く取られるのでしょうか。しかし利益に対してですから、それはある程度仕方無いのではと、私のような当事者で無い人なんかは思ってしまいます。しかし、当時の買替え特例という税制は、売却した資金でその金額以上の土地を買えば、その利益金に税金を掛けないという制度なのです。バブル期はこの制度を使って、物件を売ってそれ以上の物件を買うという事を至る所でやっていたとの事です。

しかし税務署はそんなに甘くはありません。この後が問題なのです。この特例は買替える場合は助かりますが、その後に売却する事になった時に大変な事になります。初めの買替えはそうやって税金から逃れた分、いつかはその分の税金を掛けて来るのがこの制度なのです。例えば普通の物件であれば、買った時の価格と同じ額で売却した場合、利益は無いですから税金は掛かりません。しかし買替え特例で買った物件を売る場合は、一回目に逃れた税金がしっかりと掛かって来るシステムなのです。これを知らないととんでもない事になるのです。また改めて買替えする場合でも、現在では法律が改正され、かなり自由度が無くなり、買替える物件について詳細な条件が付けられている為、この制度はかなり使い勝手が厳しくなっているのです。そしてこの制度を使っていた事を知らずに、大変な目に遭った顧客がいたのです。それを書こうと思います。

ある時訪問すると、顧客が不動産業者と家の売却の話をしていました。この顧客の家は自宅兼賃貸マンションで自宅部分が狭く、また子供も育っているので、かなり手狭になって来ていました。また社長の母親も同じフロアに住んでいました。そこで新しい家を探して住み替える計画をしていたのです。計画は売却金で残っている借金を返済して、残金で二世帯住宅を買うという物でした。今住んでいる建物は、古い物件でしたが駅からも近く、買った時からは多少値下がりしているとは言えほぼ同じ程度の金額で、結構いい価格で買い手が付いたのでした。社長も、「殆ど売却利益も無いので税金は掛からない。」と思い、その金額で売れればかなり広めの二世帯住宅が買えると、かなりご満悦の様子でした。しかし、この自宅兼賃貸マンションが、買替え特例を使って買った物件だったのです。それは既に20年近く前に、死んだ父親がやっていた事なのでした。そして、母親はそんな事は全く知らなかったのです。

そして契約も終わり、後は売買を待つだけ。そしてその時に、社長は初めて顧問の税理士に家を買い替える事を報告したのです。すると、税理士が真っ青になり、衝撃の言葉を言ったそうなのです。「この物件は買替え特例で買った物件だから、売却した時にかなりの税金が掛かるはず。」と言って直ぐに調査を始めました。それを聞いて社長は何の事が理解出来なかったのです。母親に確認しても知っている訳がありません。その後、税理士がやって来て、この制度の説明をし、今回の売却で掛かる税金の試算を持って来たのです。そして再度買替え特例を使えないか調査したとの事ですが、社長の希望の条件ではそれは無理との事でした。そしてその税金は想像を超えた額との事でした。

こんな税金が掛かるのなら、とても今の二世帯住宅は買えません。急遽、その新しい二世帯住宅の購入はキャンセル。違約金関連は涙を飲んで支払ったとの事でした。そして、住み替える住宅については再度探す事となり、暫くは今の住まいに住まさせて貰い、探す事になったのです。結果は当初計画していた二世帯住宅の半分程度の大きさの家を購入。以前と変わらないサイズの家となり、更に以前はマンション形式だった為、別の部屋だった母親も、同じ家に同居のようになり、家族間がギクシャクしてしまう結果となりました。その後も社長は、父親の事を良く怒っていました。「全く買替えなんてするからこんな事になったんだ!」と、訪問する度にぼやいていたのを覚えています。その後、私は転勤したので詳細は分かりませんが、あの感じであれば家庭争議でも起きそうな感じでした。

その後も、こう言った物件の買替えの話は、顧客の間では結構聞く事がありました。私は専門家では無いので、それ程突っ込んだ話はしませんでしたが、結構皆さんはこの特例を使えるようにと、税理士と相談しながら進めていました。やはり税金は極力払いたくは無いのでしょう。しかし、私はそう言った話を聞くたびに、この失敗した家族の事を話すようにしていました。あくまで税金を繰延べしているだけなので、いつか誰かが払うようになる。そしてその時にこれをやった先祖は誰なのか恨まれる事になるから、今払える力があるなら税金は払っておいた方がいいと、意見を言っていました。しかし全ての顧客が、この特例を使う事を選択していました。それはそれで構わないと思いますが、この家族のようにならないように、しっかりと、買替え特例を使った事を後世に伝えて行って欲しいと思っています(余計なお世話かな😅)。

北海道の、人もたくさん通る公園で見たエゾリスです。犬もいたし危ないと思いましたが、リスにとっては余計なお世話なのでしょうねf:id:x-japanese:20221018095650j:image