前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

417.私の会社員時代、やってらんない記憶.87

続けて法人化という手法についての事例を書こうと思います。この節税手法は、個人で賃貸物件を所有している人の節税対策で、割と最近流行り出した物だそうです。この国の税制は、法人税(会社向けの税金です)はトクとまでは言えないけれど、個人よりは税率が低いと言われています。個人では最大45%の所得税が掛かる所を法人税は30%そこそこの差を活用した、節税対策なのです。中々これに該当する人は少ないので、一般的に知られている節税ではないのですが、ここに落とし穴があったそうなのです。これは金融機関が提案した事に対して、その顧客の顧問税理士が知ったかぶりをして対応し、大変な事になった事例との事でした。

その顧客は古くから都心の一等地に土地を持っていて、そこに十階建ての賃貸ビルを建築して個人で所有していました。一等地だけあって賃料も高く、所得が2000万円以上あったそうです。この顧客に対し、サブメインの取引金融機関が節税の一環として「法人化」を提案、そして、その専門家も紹介すると言って来たそうなのです。もちろん金融機関は只でこんな情報を持って来る訳がありません。この顧客のメインの取引銀行の借入金を、自分の銀行に変えて欲しい下心もあるのです。

顧客からすれば多少手数料が掛かったとしても、毎年の税金が安くなるなら是非と、そのサブの金融機関に依頼したそうです。そして、この話を顧問税理士に報告したところ、この顧問税理士が口を挟んで来たとのでした。しかし、この顧問税理士は、普通に毎年の申告だけをしており、とても高度な節税対策など対応出来るようなノウハウは持っていなかったのです。

ここでちょっと難しい説明ですが、法人化の基本的なスキームは、個人から法人(会社の事です)に所有する建物のみを売却するのですが、この売買の価格付けが難しく、また簿価(税務上の価格です)とか固定資産上の価格とか色々関わって来ます。また売買後は土地と建物の名義が違ってくるので借地権の問題が絡み、かなりの専門知識がいるようなのです。この売買価格次第ではメリットが無い事もあるため、かなり慎重にシミュレーションをするそうなのです。またこの顧客は金融機関からの借入金もあった為、売買時にこの借入金が個人に残ってしまう危険もありました。なので更に慎重な試算が必要だったのです。

この顧客の借入金は相応にあり、固定資産税評価と簿価の価格とも釣り合わず、ここが専門家の腕や見せ所と言った事案だったそうです。しかしここで、例の顧問税理士が登場します。そして、この法人化は自分がやると言って、金融機関が紹介して来た専門家を断らせてしまったのでした。この税理士からすれば、他の税理士にこんな事をされたら、おそらく自分の面目が立たない位に思ったのでしょうか。そして、早速その対応をしたのでした。

そして数ヶ月後、提案した金融機関がその後の事を聞きに行ったそうです。そしてそこでその担当者は愕然としたそうなのです。何と、金融機関の借入金と建物の売買の価格に差が出てしまい、それだけでは個人の借入金が返せないと、借入金と売買金額を合わせる為、本来いじってはいけない個人の土地を、一部会社に売却したと言うのです。するとどうなるのかと言うと、土地を売却した事により、土地に売却益が発生して多額の譲渡所得が掛かってきたというのです。それは当然です。この人達の土地は先祖代々の土地です。するとほぼ買った価格など無いのです。すると売買金額のほぼ20%が税金で取られる形になります。この顧客、こんな税金が掛かったら、全くこの法人化は意味が無い物となってしまったと言うのです。もちろん懸念した借地権の対応などしていませんでした。金融機関の担当者はそれを聞いて、顧問税理士に突っ込んで確認したそうなのです。すると、その後その税理士から、あんな生意気な金融機関は危険だから取引を切るようにと、その顧客は言われたそうなのでした。

これを読んで皆さんはどう思いましたでしょうか。私はこの事案を聞いた時、こんな専門家に一族の将来を牛耳られていると思ったら、それは恐ろしいと思いました。そしてこんな事を平気で行う専門家の面の皮の厚さと言うか、思い上がりと言うか、私は言葉も無かったのを覚えています。さらにこの話には続きがあり、この顧客はさすがにこの税理士には不信感を覚えたのでしょう。取引を切ったはずのサブの金融機関の担当者に、これで良かったのか確認の相談を申し込んで来たそうです。しかしその担当者からすれば、顧客の事を思って提案した事を言わば裏切りのような事で返されたのに、空いた口が塞がら無かったとの事でした。もちろん対応しなかったそうですが、この顧客、将来どうなってしまうのだろうと、とても心配になったとの事でした。

結局この顧客は、この顧問税理士の明らかな無知による間違った節税をやらされ、返って多額の経費が掛かって、それで終わりという結果になりました。ここまでされて何も文句を言わない顧客もどうかと思いますが、それだけ専門家という人達の影響って大きいんだと思ったのでした。そして、この税理士はそのままこの顧客の顧問税理士のまま、ずっと関わって行ったそうなのです。勉強会はここで話は終わりでした。

私はこれを聞いて、このような専門家に憤りを感じ、こんな事が許されていいのかと思うようになりました。世の中はどんどん進歩して行っています。新しい情報も日々更新されて行っています。そんな中、昔取った杵柄では無いですが、知識や情報をアップデートせず、いつまでも昔の栄光に浸っている専門家がいるとすれば、それはその顧客が本当に不幸になってしまいます。このような地主とか資産家は、専門家によって家族や会社の将来が決まると言っても過言では無いと思いました。

昔がいいのは景観や人情くらいにして欲しいものですf:id:x-japanese:20221109131858j:image