前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

415.私の会社員時代、やってらんない記憶.85

次も前回の専門家のように、価格に固執するあまりに、交渉が流れた話です。これは更に難しいM&Aの話です。M&Aとは巷では企業買収と言われて、何かきな臭い、胡散臭い感じのする用語に聞こえます。確かに日本がバブル崩壊して、その後暫くは、主にゴルフ場などが外資に買収され、これがよくM&Aの事例として取り糺されていました。日本は当時、その事がかなり衝撃的だった為、M&Aは何故か悪業的なイメージが植え付けられてしまったようなのです。しかし、最近では、企業の事業の引き継ぎにこの手法を使う事で、より良い引き継ぎが出来る事案が増えて来たようなのです。

後継者がいない社長は、M&Aを扱う業者に自分の会社に興味ある会社を探して貰い、条件があったら買い取って貰うという手法です。これだと、売る側の社長にはお金が入り、買う側の会社は更なる飛躍が期待でき、まさにウィンウィンの構図になる訳です。しかし、ここでも、依頼する専門家を間違えると悲惨な目に合う事例が紹介されました。

これはある会社の社長の妻の話です。ある日、この会社の社長が急死してしまうのです。そして急遽代理で、この妻が社長に就任します。しかし、この妻、経理こそやっていましたが、経営には全く経験がありません。それでも日々会社は動いて行きます。そのうちに妻は、ストレスで心身を壊してしまいます。そして、妻は取引銀行に相談をします。すると相談の結果、会社を売却する事を勧められ、業界のM&A業者を紹介してくれたのでした。すると運良くこの会社の下請けの社長が、買い取ってもいいと手を挙げてくれたとの事でした。相手企業は下請けなので、仕事内容や社員の事もよく知っています。そして業者を仲介して話はとんとん拍子に運んで行ったのです。

妻は同時に顧問の税理士にも協力を依頼しました。銀行の紹介してくれた業者とは言え、こちらの事をちゃんと面倒見てくれるのか不安だったからです。しかしこの税理士がとんでも無かったのでした。この税理士は、相談に乗るや否や、売買価格の事ばかりに焦点を置いて来ました。そしてM&Aのデメリットばかりを説明します。妻は、この人は自分の会社の顧問税理士だし、それは自分達の為に言ってくれていると信じてしまいます。そしてこのM&Aは最終局面に入ります。いよいよ価格の提示とその他の条件提示です。当初は妻は、会社と従業員だけでも引き継いでくれれば、条件面はうるさい事は言わないとの事で、特に価格についてはM&Aの業者が提示した価格で推移していました。しかし、この時になって税理士が登場して、その価格が大幅に引き上がったのです。

これには業者を始め、買い取る側の社長も大激怒。しかし、顧問税理士は一歩も引きません。それよりも机上の計算で出した金額の正当性を訴え、逆にM&Aの業者は買う側とつるんで、安易に売買価格を引き下げている位の事を言ってしまったのです。結局この話は流れてしまい、この妻の会社はその後、商売が成り立って行かずに、閉める事になったのです。これは妻にとっても従業員にとっても悲劇です。税理士のこの、M&Aの常識を知らない専門家のせいで、まとまりかけた話を壊してしまったのです。更にこの話は、税理士の企みもあったのがその後分かったのでした。税理士は、この話が進むとこの会社は売られてしまうと思い、この話を壊す事を画策していたそうなのです。この話が進むと自分の顧問先が1件減る。それなら価格を釣り上げ、手数料を上げて利益だけでも取りたいと思っていたようでした(M&Aの手数料は売買価格に一定の割合を掛けて算出します)。これでは、妻や従業員は本当に気の毒な被害者です。「それは酷いんじゃない?」では済みません。

ここでM&Aの補足をしますと、中小企業の一般的のM&Aの話は、売る側の協力が無いと、まず成功しないとの事でした。上場企業では無いので情報公開という意味では、買う側に大きなデメリットがあるとの事です。買った後、その会社にどんな事が起きるのかは、買ってみないと分からない、と言うのです。なので、売る側がある程度価格で買う側に近づく姿勢が必要との事なのです。それを机上の計算でこれだけの価格になるはずだ、等と言う専門家が出て来ると、そこでM&Aの話は進まなくなるとの事でした。

相談する相手を間違えると大変な事になるというこの事例。それで、この妻や従業員が路頭に迷う事になってしまうなんて。専門家の役割はそれだけ大きいのに、これについての検証や責任は、どうなっているのでしょうか?。この事例は本当に後味の悪い嫌な事例なので、随分と私の心の中に残ったのでした。

会社を引き継ぐのは本当に大変。何とかしないと本当にこの国の技術とか、消滅してしまうのでは無いかと危惧しています😔f:id:x-japanese:20221025144123j:image