前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

401.私の会社員時代、やってらんない記憶.79

その後、息子は多額の相続税を何とかしなければと、顧問の税理士と共に色々な対策を講じたそうなのです。相続対策とは、一般的には建物を建てたりとか、賃貸アパートを買ったりとかが良く言われています。せめて相続税を安くする為に、色々な方策を税理士と考えたそうです。しかし、ここでまたまた考えられない事が、この対策を阻みます。

その後、いい賃貸アパートが見つかり、それを先代の社長に購入させる事により結構な相続対策になる事が分かり、息子は早速取引金融機関に相談に行ったそうのです。金融機関はこれには全面協力をしてくれて、すぐに決裁が下り、早々と取引を行う日程調整に入ったのです。順調に事が運び、息子もこの程度まで相続税が下がれば何とか対応出来ると安心したそうです。そして、いよいよ取引日が迫って来たある日、その前に書類のやり取りがある為、金融機関と一緒に司法書士の先生が、今回の購入者である先代の社長に会いたいと言って来たそうなのです。所謂意思確認です。

息子は早速、先代の社長である父親を会社に呼び、約束した日に会社の応接室で待っていました。そして、その時に司法書士の先生の言葉に耳を疑ったのでした。その時、先代の社長はまだらボケ状態でしたが、何とか普段の生活には支障は無い状態でした。しかし司法書士の先生は、この状態では売買をする事は出来ないと言ったそうなのです。息子は一瞬何が起こったのか理解出来ず、聞き直したとの事でした。要するに認知症の人は意思能力が無く、このような法律行為は不可能との見解を示したとの事でした。

そんな事は全く初耳の息子は、何度も司法書士の先生にお願いしましたが結論は変わらず、金融機関も司法書士の見解には異論を挟めないとの事。結局、この取引は流れてしまいました。その後、息子は何とか相続対策をする為に税理士と、後見人制度や色々な勉強をし、金融機関に相談したそうなのですが、結局認知症を発症している人の法律行為は出来ないとの一点張り。贈与等も認められないとの事で、結局何も出来ずに、先代社長の死を迎えたのでした。

息子は、こんな理不尽な事があるのかと本当に嘆いていました。そして、葬式の時、参列者からこのような話が他にも実際にたくさんある事を聞いたそうなのです。それにはまた違った怒りが込み上げたとの事でした。国や税務署はこのような悲劇的な結末になる事を何も周知しない事に、とても憤りを感じたとの事でした。そして、この後、更に息子を憤慨させる出来事が続くのでした。

葬儀の後、葬儀代を払う為にお礼方々、金融機関に訪問したのです。金融機関からは労いの言葉を掛けられ、今後もメイン行として協力して行くという心強い言葉を貰い、少しは心も落ち着いたのでした。しかし問題は次の場面でした。息子は葬儀等で必要な資金がある為、父の口座からお金を引き出したいと言いました。すると、それは不可能のと回答でした。息子は何の事か分からず、聞き返したそうです。金融機関の言い分は、亡くなった人の口座は凍結され、相続の遺産分割が終わるまでいじれないとの事でした。これも初めて聞く事でした(現在は葬儀代の支払い等、多少改善されているようです)。

それなら事前に伝えて欲しかったと言ったそうですが、既に後の祭り。そこで息子は逆に聞き返したそうです。簡単にまとめると以下の通りです。「取引している人は皆さんそうやって対応しているのか?」。回答はイエスです。続けて「人が死んだって銀行が分かるシステムがあるのか?」。回答はノーです。「じゃあ、何で死んだ事が分かるのか」。回答は「葬儀に出席したり、他人からの情報、町会や商店街の回覧等で分かる」です。「それでは見つからなかったり、黙っていたら銀行はお金を出せるのか?」。この辺りから回答がハッキリしなくなったとの事です。本人確認が必要な場合があるとかウヤムヤして来ます。「それならキャッシュカードなら払い出せるのか?」これには銀行側も回答に困り、実際はそこまで管理されていないので、そうなると仕方が無いとの回答でした。

息子はこんな馬鹿げた話があるのかと、またまた憤ったそうです。別にこの金融機関が悪いのではなく、この国のシステムがこんなにもしっかりと周知もされず、重ねてグレーでいい加減だとは思わなかったそうです。人が認知症になったり、死ぬなんて事は毎日のようにある事です。その対応が、こんなグレーで、理不尽な対応と言ってもいい位に処理されている事が信じられなかったそうなのです。

その後はこの会社は、新社長である息子の頑張りで、その後も素晴らしい業績を上げていました。私が退職する時に聞いた話では、新社長は多額の相続税を借金で支払い、既に返済も終わっているとの事でした。そして息子は二度とこのような事を味わいたく無いと、その後は顧問税理士を変更して、相続のコンサルティング会社と契約、完璧な事業引き継ぎと相続対策をしているとの事でした。

これを読んでどう思いますでしょうか?。私は本当に「それは酷いんじゃないの?」と、思いましたし、先代社長や息子さんの胸中はどんな物だったのだろうと思います。そして、よくこんな逆風にめげずに立ち上がって行ったと思います。私はこの話を聞いた時、自社株も認知症も預金の凍結も、全て、後出しジャンケンのような、騙し討ちのような感じがしてなりませんでした。今でさえこのような問題は周知されつつあり、色んなコンサルタント会社が活躍していますが、かと言って、この会社のように昔大変な目に遭った人達はそのままで、多額の相続税を支払ったり、あえなく会社を清算したりしたまま、その時はその時と言った感じで放って置かれている感じです。真面目に一生懸命頑張った人には何か報いるようなシステムにしないと、本当にこの国で事業をしようなんていう人達は居なくなってしまうのでは無いかと、本当に危惧しています。これも失われた30年の一因のような気がしてなりません。

頑張れば頑張った分だけの成果が無いと、やる気なんて出て来ないですよね😅f:id:x-japanese:20221017164733j:image