前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

404.私の会社員時代、やってらんない記憶.82

この回は依頼する専門家も完璧では無いという事案を書こうと思います。これも顧客の相続対策の話なのですが、相続と一言で言いますが、ただ税金を安くするだけと思っている人が多いと思います。しかし、真の相続対策とは、もちろん税金を安くする事も重要ですが、それ以外にも、円滑な相続、揉めない相続をする事が重要と言われています。これは、それを間違えると大変な事になる事案です。

まずは自社株です。これは既に前回書いたのと同じような事なのですが、これはある相続関連の勉強会に行った時の事例の話です。ちょうどこの頃は395回目のブログの第五の覚醒の頃で、よく資格の勉強をしていた頃でした。これは、昭和の時代の相続対策の話が中心で、この勉強会はこの事例を元に、相続対策は一方向から見るだけではなく、多方面から見て様々な事を考慮して進める事が重要と説明をしていました。これが私もとても印象的だったのです。内容は、相続対策の為に養子縁組をたくさんしたという事例でした。これはちょっと面倒な話になりますので、相続税について少し説明します。

相続税は、所有する財産に一定の税率を掛けて算出される税金ですが、相続人が多いほど控除される金額が増えるのです。差し引いてくれる額が大きくなればなるほど、相続税は安くなる計算です。基本、相続人は配偶者と子供、または親族ですが、相続人は養子縁組をして増やす事も可能なのです。今は税務上はその人数が制限されていますが、昭和の時代はそれが無制限だったのです。よって、相続対策で養子縁組をたくさんして、相続人を増やして相続税を安くするという方法が、主流の時代であったとの事でした。

そして養子縁組をたくさんして、自社株をその養子縁組した全員に遺産分割して、相続税を減らした事例が紹介されました。これは法律の専門家である弁護士に依頼した事例との事でした。確かにそれで相続税はゼロになり、依頼人はとても喜んだとの事でした。しかし、実際に依頼人が死んでみると、思わぬ弊害が出て来たのです。数十人に自社株の名義が別れた事により、実際にその会社を引き継いだ息子の持分が過半数に届かず、何をやるにしても、散った株主に協力を依頼しなければならなくなったのでした。そしてこの人達が皆、いい人達とは限りません。中には折り合いが悪い人間も出て来ます。そうなると協力どころか、邪魔をする輩も出て来るのです。

そうなると会社の経営は収拾が付かなくなって来ます。これは年を重ねる毎に、収まるどころか大きくなって来ます。その株主が死亡すると、その株は当然に相続されます。すると殆ど面識の無い人が株主になって行きます。こうなるとどうしようもありません。株を買い取って欲しいとか、配当をよこせとか、中には株主同士が結託して過半数を握って、息子を追い出す工作をする輩も出て来ました。息子は会社を引き継いだ後は商売は二の次で、こんな株主対応に追われる日々が続いたとの事でした。

この勉強会ではその後の事は触れていませんでしたが、引き継いだ息子としたら、「それは酷いんじゃない!」と思ったと思います。しかし、相続税を安くするばかりに気を取られ、その弊害に全く目を向けなかった為に起きた事案です。これは専門家ほど陥りやすいので注意が必要との事でした。専門分野の知識に固執するあまり、他のデメリットや弊害が見えなくなり、その時は大成功な相続でも、後々に落とし穴が待っているという、結果、最悪な相続となってしまうとの事でした。今は専門家同士がタッグを組む、コンサルタント会社が隆盛ですが、専門家が集まって、それぞれの知識でメリット、デメリットを話し合い、方向性を決める対応がベストなのだと思います。

この勉強会では、贈与の事例も紹介されました。贈与とは、毎年110万円まで(この勉強会の時は60万円でした)、無税で財産を移す事が出来る税制です。これも長い期間を掛けて計画的に行えば、費用も掛からず単純明快な相続対策だったのです。しかし、これは親というよりは、子供達の方から依頼されて行う事例が多かったとの事でした。相続税を心配するあまり、子供達が専門家に相続対策を依頼します。そしてその時の専門家が、毎年の贈与を繰り返し行い、親の財産を税金が掛からない金額まで子供達に移行して行けば(暦年贈与と言います)、相続税はゼロになると提案されたのです。この手法は今でも多く見られます。親が主体的で行っているなら問題無いですが、そうで無い場合が問題となるのです。

この手法は前回の自社株と一緒で、相続税をゼロにするとう意味では有りでしょうが、親から見たら「それは酷いんじゃない?」と思われる対策だと思いませんか。ある日、専門家が入って来て、自分が苦労して貯めたお金が、毎年、子供へと贈与され、それが延々と続いて行く訳です。段々と減って行く貯金を見て、親達はどう思うでしょうか。この事例では、その後、子供達が何となく贅沢な暮らしをしているのを見て、途中で親がブチ切れたそうです。そして親子間の関係がギクシャクして、この贈与は中止となり、親はその後は何もしなかったそうです。これも贈与される側に立った配慮が足りなく、節税と、片方の立場だけ考えた相続対策だった事が、親子関係を壊してしまった原因だとの説明でした。

こういった勉強会は本当に色んな事を教えて貰って良かったと思っています。そしてこういった勉強会では、この他にもたくさんの事例が紹介されたのです。

航空機もたくさんの専門家が集まって、早く安全に快適に飛んでいるのですf:id:x-japanese:20221020092159j:image