前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

340.私の会社員時代、やってらんない記憶.65

最後に客との闘争を書こうと思います。我が闘争は会社内だけでは無く、顧客とももちろんやっていました。それだけ必死でこちらも頑張っていた証拠なのです。思い起こすと結構ありました。それはやはり営業もベテランの部類に入って来てからが多かったです。

1番のパターンは、営業の才能は長けているのですが資金繰りや回収の重要さが分かっていない社長が結構いたのです。黒字倒産という言葉がある通り、売上はあってもそのお金が回収出来なければ、給料は払えません。事務所とかの経費も、仕入れた商品代も、金融機関の借入も払えません。しかし結構こういった方面は後回しで、売上さえ確保しておけばいいと言う経営者は意外に多かったのです。特に若い社長に多く、経営手腕に自信があるから独立もしたのでしょう。しかし気がつくと資金が行き詰まったり、または詐欺にあったりして回収が出来なかったりと、そういった事例は結構見て来ました。

また結構いたのが、銀行のヨイショに乗りホイホイとお金を借りている社長でした。こんなに借りてどうするのか聞くと、「銀行さんがうちに融資したいと言ってくるからさ〜」と満更でも無い態度です。こんな社長が1番の貸し渋りの被害者でした。こう言った社長にも、会社と釣り合った金融機関と付き合うべきだとよく言っていましたが、大銀行に言われるとついついいい気になるのでしょう。その後、貸し剥がされ、運転資金が枯渇して経営が出来なくなると言った事例を多々見ました。

また、売上を伸ばす事に終始している社長も結構いました。売上を伸ばすのはもちろんいい事なのですが、それに比例してインフラも必要になりますし、他の経費等の色んな物が大きくなっていくのを理解していない社長も多かったのです。また急激な売上増加も資金が足りなくなる大きな原因なのです。こう言った社長は何か一つつまづくと、とたんに資金が回らなくなります。すると急速に萎んでいくように、売上も落ちて行きます。こうならないように、随分とアドバイスした社長は多かったのです。

また見てくれを重視する社長にも困った物でした。確かにビジュアルで訴えるのも経営の大事な部分がもしれませんが、本社経費はなるべく少ない方がいいのです。事務所や店舗が目貫通りに無くたっていいのです。立派なビルに入らなくたっていいのです。こういった、所謂固定費は、結構ボディブローのように後から効いてくる物なのです。そんなに見栄を張るな、という事を伝えるのは結構難しく社長のご機嫌を一番損ねるので、苦労した覚えがあります。

このような社長には、私は提言という形で、本当に良く警鐘を鳴らしていました。また巷では公的な機関でもお金を掛けずに色々と経営相談に乗ってくれる所もあります。そんな所を紹介したりもしていました。時には「生意気な口聞くな」とか「そんな事は銀行から聞くよ」とか怒られたりされましたが、顧客の事を思うからこそ意見を言っているという姿勢を見せていると、大抵の顧客は好意的に見てくれるようになりました。

その他にも、特に銀行の貸し渋りの頃には、随分と提言をしたのを覚えています。ある顧客で、家賃を払っているのは勿体無いから、土地を買いたいから業者を紹介して欲しいと言われた事があった時、今は止めた方がいい事を何度と無く説得した事もありました。家賃は経費で落ちるが、返済の元金は経費にならないから資金繰りがキツくなる事や、銀行の貸し渋りの実態等を丁寧に説明した事もありました。この時は社長に危うく出入禁止になる位怒られましたが、それから随分と経った時に、奥様からあの時土地を買わなくて本当に良かったと、お礼を言われた事もありました。こんな事があると、あの時言って良かったと思うものですが、提言やアドバイスと言うのはその時は分からない物。顧客を思うからこそ提言をするのですが、それが分かるのはその時では無い事、随分と経った時に初めて気づいてくれる事が多いのが結構辛いのです。

こんな事をしていた私。しかし私の提言をうるさく感じて、ある日、本当に取引を移行した顧客がいました。しかしその後に、私の提言が本当だったと気づいたようでした。約1年後、私に連絡があり、その時の提言をもう一度聞きたいと言われた事がありました。私は取引を戻すのなら考えてもいいと言ったのすが、それは直ぐには出来ない様子でした。恐らく取引先と何か契約があるのでしょう。その煮え切らない態度に、私の我が闘争のマグマが爆発しました。私はその顧客に電話口で怒鳴ったのでした。「こちらだって真面目に顧客の事を考えて必死でやっている。あの時だってあなたの会社の事を考えて提言をしたのだ。それを、生意気だ、気に入らない、と言うだけで取引を移行するなんて、経営者としてどうなのか疑問である。そちらだって必死で考えてやって欲しい。顧客だからといって何でも受けると思ったら大間違いだ」。

相手は私の勢いに圧倒されてしまったようで、さすがに言い過ぎたと思いましたが、こちらも必死でやっているという自負がありました。この根底には、自分の実家の事があったと思いました。自分の家の会社のように苦しい思いをさせたく無いといった気持ちが、こんな、顧客にも言い過ぎかと思うような提言をさせていたのだと思っています。今となっては、まだまだ若かったかな、と思っているこの頃です。

かってSLを見にここまでやって来た頃は、日本全体が元気というか活気がありました。f:id:x-japanese:20220907104120j:image