前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

324.私の会社員時代、やってらんない記憶.57

営業になって、続けて思ったのは決算書についてでした。昔はそんなに厳格には販売の審査等を行なっていなかったようなのですが、段々と世の中も変わって行くと、信用枠だの稟議制度等がしっかりと運用され始め、顧客にはよく決算書をもらう様になって来ました。その為、我々もよく決算書については勉強されられました。

売上があって、仕入れや給料や店の維持等の経費があって、銀行利息とかを調整して、利益が出る一連の数字がこの決算書には出ているのです。また今までの蓄積もこれに書いてあり、これに基づき、顧客の信用枠を決めたり、本部の稟議書を書いたりするのです。そこで私が気になったのが、結構赤字の会社があった事でした。赤字って事は、お金が足りないという事です。そしてある日、何とある顧客にその事を聞いてみたのです。単刀直入に、赤字なのにどうやって食べてるのですか?、と。するとその顧客は、アッケラカンと私に言ったのです。「そんな物、正確に出す奴なんかいるか。税金取られるだけだ」と言ったのです。当時はまだ昭和の時代、まだまだアナログでしたし、主に現金払いで商売をしていた時代です。こんな事はザラにあったのです。

実際に、売上を載せていないなんていうのはザラで、アパートを持っているのに収入を載せていないとか、架空の従業員に給与を払っていたりなんて言うのもありました。またハンコをたくさん持っていて、勝手に領収書を作って経費にしている顧客もたくさんいたのです。結局、当時の決算書なんていうのは、上場企業でもなければ、結構いい加減な物だったのです。私はそれを、うちの実家もそうなのかな〜と、興味深く見ていました。

そんなある日、店で顧客の信用枠を作る話になりました。この顧客はいつも多少の赤字を出しているので、店のウケもあまり良くないのでした。私は顧客に頼まれた数字を希望枠として申請したのです。すると事務から、待ったの判断が出ます。決算書の数字から見るとこの販売枠は大きすぎるとの事でした。それについては例の如く、それは昨年の数字で今年は更に売上がアップするそうです、などとのらりくらり反論していると、この顧客はいつもそうだ、みたいな事を言う事務がいたのです。決算書の売上と弊社の仕入れを見ると、売上が少ないので赤字になると分析していたのです。要は安売りし過ぎとの判断でした。そして事務の結論は信用枠の減額です。

私はそれに対して、常識外れな事を言って反論しました。我が闘争の始まりです。「そもそもこの決算書って、本当の数字なのですかね〜」。すると一瞬、皆は、何言ってんだ?という顔になりました。事務は、それでは粉飾決算では無いかと言い始めます。私は、粉飾は利益を水増しする事が主な目的であり、この場合は単に売上を抜いている可能性があり、逆に悪く見せているのでは、と言ったのです。続けて、考えてみればこの顧客、毎年赤字なのになぜ食べて行けるのか。現場に行けば直ぐに分かります。そんな厳格な数字を出している経営者なんていませんよ、と私は言ったのです。どこかに隠している収入があるのか、または売上を少なくしていると思いませんか?と、突っ込みました。

事務はそれは一大事と大騒ぎをし出しますが、それがこの当時の現実だったのです。なので、よく税務署から税務調査が入り、追徴課税させられていたのです。この辺りは、映画の「マルサの女」を見るとよく分かります。私もこの映画は封切りと同時に見に行き、随分と影響を受けた映画で、後輩達にもぜひ見るように勧めていました。机上で論ずるよりも、実際の動きを確かめて色々と判断すべきではないかと、この闘争は私は引きませんでした。

結局、この稟議は、補足の意見書を私が書く事により決裁となりました(もちろん、そのまま書いた訳ではありません😅)。特にこの事を顧客には伝えませんでした。それよりも、こう言った顧客には、今後の経営計画や設備計画をよく聞き、弊社で言えば何か大きい仕入れがある時や、金融機関で言えば何かお金を借りるような場合は、それなりの売上なり利益なりをちゃんと決算で申告しておく必要がある事をアドバイスしていました。

今は既にこんな事は殆ど無くなっていると思います。デジタル化が進み、売上も、資金の流れも殆どがネットやパソコンで記録が残ります。アナログ時代だからこそ可能だった節税、と言うか脱税だったのです。ある意味、経営者はその頃の方が色々やり甲斐があったのかもしれませんね😅。

昔の方が風情もあったし義理人情もありました、なんて言うのは歳を取ったからでしょうかf:id:x-japanese:20220825231219j:image