前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

416.私の会社員時代、やってらんない記憶.86

次は専門家の知識についての事例がありました。この国の資格という物は、取ってしまえばそれで永遠という物が殆どだと思います。考えてみれば医師免許でさえそうなのです。例えば、医師に治療法を相談したとします。しかし、その全ての医師が最先端の医療を提供してくれる訳では無く、勉強している医師を選ばないと大変な事になるという事です。私の前立腺癌の治療も、確かにそうでした。

私の当初の病院の医師は、勉強していない訳では無かったのですが、自分の得意なやり方で治療を進めようとしていました。患者からすれば、色々な治療法の中から、自分の納得する治療を見つけたいと思うのが当然だと思います。しかしこの国の医師は、様々な選択肢から依頼人に最善の選択をしてくれる訳ではなく、殆どの場合、自分の知っているやり方や、得意なやり方を提案してくると思った方がいいと思います。そしてそのやり方は、最悪な場合、もしかしたらアップデートされていない古いやり方かもしれません。これからの時代は、依頼する側がしっかり勉強したり情報収集したりして、その上で専門家と話し合う時代なのだと、私は思っています。この辺の話は、私が実際経験した事なので詳しくこのブログに書いてあります。23回目から26回目辺りをご覧下さい。

そしてこれから書く事例は、都内のある地主の相続の話です。昔は農家だったのに都市化が進み、自然と地主になってしまったパターンの人はたくさんおり、中々、節税や相続対策などはピンと来ていなかった人達は結構いたのです。なので詳しい数字やお金に関係する事は、農協とか税理士にお任せと言った具合の人が多かったとの事でした。そしてその地主のご主人が亡くなり、家族は当然にその相続を、顧問税理士に任せたところから悲劇が始まります。家族としては、税理士と言えば税務の専門家と思っていたのです。なので誰に頼んでも同じように申告をしてくれると思っていたと言うのです。

ここで、この勉強会でとても興味深い話を聞きました。税理士免許と言うのは数種類の項目から必須の項目と選択の項目合わせて5つの合格を取ればいいのです。よって、税理士の人でも例えば相続税は苦手とか、法人税は苦手とかと言う先生がいるとの事なのです。そしてこの顧問税理士は、相続税は苦手な部類の先生だったのです。そうならそうと断ってくれればいいのに、こういった専門家と言うのはプライドが高い方も多く、この先生も御多分に洩れず、相続税の申告が出来ないなどと言えなかったようなのです。

そして当時の相続税の申告期限は6か月です。その間に相続人の確定から始まり、金融機関の預金、借入金の調査、生命保険の調査、土地の評価、その他の資産の評価、そしてどのように遺産を分割するのかを決定しなければなりません。当然にこの先生には荷が重すぎました。そしてドタバタの末、相続税はなんと10億円近い数字となり、この地主はその税金を農協から借入で払い、その後土地を売ったりして返済する事にしたというのです。

そしてこの後、3年位経った時に妻は、とある金融機関から偶然に「相続税の見直し」の提案を受けたのでした。試算だけなら手数料も掛からないから、お宅のような地主は一度点検してもらうつもりで見てもらうといい、と勧められたとの事でした。妻は息子達と相談してみたところ、家族内では「税理士の先生を裏切るような物だ」とか「もう済んだ事だから蒸し返さない方がいい」とか、「税務署に睨まれる」とか、とにかく波風を立てない方がいいという意見が多かったとの事でした。しかし妻は、以前から取引している金融機関でもあったし、試算だけでもやってくれるというので、頼んでみる事にしたのでした。

すると何とその結果、約2億円もの払い過ぎという事が分かったのでした。妻からすれば「それは酷いんじゃない?」を通り越して、思わず笑いが出る数字だったと思います。原因は、このブログでも書いた住宅の特例を使ってなかった事と、当時、既に地主の間ではポピュラーな特例だった「広大地評価」という物を使って無かったとの事でした(現在は改正されているようです😵)。要するにこの顧問税理士、毎年の確定申告は得意ですが、相続税に関する勉強は殆どやっておらず、昔のままの知識で、この大きな相続に対応したのでした。双方の特例ともそれ程難しい物では無く、知っていればその資料を付けて、申告するだけです。税務署が認めるかは別問題ですが、その程度の知識が無い税理士に頼んだ結果が、約2億円の税金の納め過ぎです。2億円と言ったら、当時の大卒サラリーマンの生涯年収くらいのお金です。これは知らなかったでは済まない話です。

結果、妻は、長い間の付き合いだったこの顧問税理士とは契約を切ったとの事でした。そして再計算をしてくれた税理士と契約して、無事に税金の還付請求をして、その2億円は戻って来たそうです(しっかり手数料は取られるそうです。所謂、成功報酬という奴です😵)。しかしここで面白い事は、この新しい税理士は、その後の毎年の確定申告は契約はしなかったそうです。この税理士は、相続税に特化した仕事をやっており、所得税の確定申告は苦手との事でした。結果、妻はまた元の顧問税理士にお願いして、鞘が収まったとの事でした。

この事例は私は本当に衝撃的でした。特に、相続税の見直しなんて物がある事にとてもビックリしたのでした。もっと若い時に聞いていれば、更に勉強とかしたろうにと、勿体無いと思ったのでした。しかし、それにしても、頼む専門家が勉強不足で、その結果、2億円もの税金を払うハメになったなんて、どうなんでしょう。専門家の世界は本当に恐ろしい、私には無理と思ったのでした。

私にはこんな煌びやかな所で働くのは、やっぱ無理だったかな〜😅f:id:x-japanese:20221027094500j:image