前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

476.私の会社員時代、やってらんない記憶110

これも悲しかった話です。私は会社員生活の終わりの頃は、お店の業務支援のような仕事をしており、若い営業と同行したり、難しい案件や厳しい条件等の案件を一緒に考えたり交渉に同行したりと、結構精神的にはキツい仕事をしていました。その中で、顧客への支援という活動もあり、売上が中々伸びないとか、新規参入とかで悩んでいるとかの顧客に、色々な販路開拓のお手伝いや、売上アップのお手伝いをする業務を手伝っていたのでした。

一言で販路のお手伝いとか売上アップのお手伝いとか言いますが、こんな事が直ぐに出来るようならコンサルタント会社などある訳が無いのです。しかしその時の弊社の社長は、なぜかこの業務に固執し出し、他の業務をやっている担当者にまで、それをコンサル出来るようになって欲しいと言うのです。これには私はビックリ。さすがに定年間近の私にはその指示が来ませんでしたが、部全体がそのような感じになり、部長もあたふたしていました。しかし社長が言うのですから、やらない訳にも行きません。

そして、更にコロナ禍です。社長のような偉い人達は、業界の会合とか組合の会合とかイベントとか、また顧客への訪問とかの野暮用(😅)が無くなってしまった為、暇を持て余すようになっていました。すると社長を初め役員連中が、さまざまな部署の会議に出るようになって来たのです。我々の部署にはよく社長と専務が来るようになりました。そして今までの店の支援という名目で行っていた会議が、段々と顧客支援という会議になって行ったのです。

その会議の場では、全店で困っている顧客の案件を集めて、それを議論するようになって来ました。毎週5件程度の案件を集めて、この場で解決策を討論するのです。特に行われていたのは、売上が上がらない顧客の販路拡大です。新しい市場への挑戦のお手伝いや、弊社が顧客同士を繋ぎ新たな販路拡大のチャンスを作るとか、マスコミを使った宣伝のお手伝いとか、様々な事を考えてそれを顧客に提案するようになって来たのです。

社長や専務はその会議の内容にご満悦。「その案はいいね〜」とか「この顧客にこの会社を紹介したらどうだろう」とか、益々のめり込んで来る感じです。しかし私は、白けた視線でその会議を見ていたのでした。確かにこの部署には、販売アドバイスの資格を持った社員もいましたし、コンサルタント会社に出向した社員もいたのでした。また販路拡大の研修には良く参加していたので、それなりのノウハウは溜まって来ており、今までは月に数件という数を丁寧にこなしていたのでした。それをいきなり数を増やしたものですから、この部署の社員が到底見れる数ではありません。また今までは支援する顧客も、この部署が選んで対応していました。それは支援に対応出来る体力や資金力、人材、取引先がいるかも問題になるからです。

また支援をするからには、弊社のメリットも考える必要があります。やはり支援した結果、売上が伸び、弊社の販売も上がるという、ウィンウィンの構図が無ければ、ただのボランティアとなってしまいます。しかし社長はこの辺りも色々と意見を言い出します。弊社と取引してくれている顧客には、全て支援してあげるくらいの気概を持てと言うのです。そしてサラリーマンの悲しい性、上から言われると正にその方向に動いて行くのです。そして案件がみるみる増え出したのです。また、店に対しても、顧客への支援数を業績に乗せるようになり、この数も半端無い数になって来たのでした。そしてその中には完璧に業績狙いの、所謂クズ案件も多くなって来たのでした。

この部署の会議は、あっという間に支援一色。私もさすがに方向性が間違っていると思ったので、ある日意見を言ったのです。それはある商品を売り出したいがどうしたら良いか、という相談だったのです。ちょうどコロナ禍でしたので、コロナ対策と謳った販売にすればマスコミも飛びつくのでは、という事で、弊社と面識がある新聞社を紹介し、記事にしてもらう事になったのです。この時、さすがに私は反対意見を出しました。

私が懸念したのは、この顧客、もし売上が上がったら販売はどうするのか聞いているのかという事でした。するとそこまでは確認していない様子でした。私はそれは危険だし、顧客に返って迷惑が掛かると言いました。新聞の影響力は侮れない、もし新聞に出ていきなり大口の受注を受けたらどうするのか、もっと詰めた方がいいと反対したのです。しかし社長の一声で、とにかくやってみないと分からないと言う事で、ゴーサインが出たのです。結果は全く予知しない所からクレームが来て、その顧客は大変な事になってしまったのでした。

それは商品を仕入れている会社からでした。内容は、この商品を開発して製造、卸しているのは我々であり、なぜそれを販売している会社がマスコミに取り上げられるのか?、といった、妬みややっかみだったのです。製造元のメンツでしょう、面白く無いのです。これを言われた弊社の顧客は顔面蒼白です。商品がストップされたら目も当てられません。しかし一旦掲載されてしまった物はどうしようもありません。その後、この社長は平身低頭でその会社に日参。先代の社長である両親まで謝りに行ったそうです。そしてその先代の奥様から、「何て事をしてくれたんだ!」と弊社がクレームを喰らうと言うオマケ付き。しかし社長にはその事は誰も報告しなかったのでした。

またある顧客からは、大量に残ってしまった商品から健康ジュースを作って、それを販売したいとの相談があり、これも宣伝ありきでどんどんと支援の話が進んで行ったのでした。これについても私はその余った商品の事について、もっと詳しく調べた方がいいのではと反対しました。しかし社長が進めるので誰も待ったを掛けられません。その後、余った商品は今後も定期的に余るのかをよくヒアリングしていない為、その後、大騒動になったのでした。案件を進めて、色々な顧客に繋ぎ、ある程度軌道に乗る所まで来たのですが、肝心の商品がその翌年は余らず、計画が頓挫してしまったのでした。これも賠償責任までには至らなかったのですが、一つ間違えば大変な事になっていたと思います。

また単純に、支援の結果、売上が上がったのですが、その顧客にそのキャパが無い為、受注を捌ききれず、敢えなく撤退した顧客もいました。同様に途中で資金が足りなくなり、銀行からも借入が出来ず、敢えなく撤退となった顧客もいました。その辺りで私は退職したので、その後どうなったか知りませんが、先日ある後輩から聞いた話では、逆に苦情が多くなっているとの事でした。また数をこなすあまりに、全く支援してもメリットの無い顧客の案件が増えているとの事でした。やはり支援ありきのやり方では無責任ですし結果も曖昧です。支援後のある程度のシミュレーションが必要ですし、本当に私が反対意見を出したあの顧客達は、今大丈夫なのか心配になってしまいます。勝手に支援して、その後は知らないと言ったやり方は本当に間違っています。またボランティアのような仕事の仕方も間違っていると思います。私が思うに、社長に受けたいが為にやっていただけのような気がして、最後の方は本当に悲しくなっていました。

やはり、経営陣はあまりにも現場に近付かない方がいいと思います。もちろん現場が大事です。しかし方向性は経営陣で作りますが、実行は現場に任せるべきなのです。そしてそれが上手く回っているのかを、時折現場を回って確認すればいいのだと思います。既にコロナ禍は終わりましたが、まだあのような会議が続いているのでしょうか。そうだったとしたら、本当に悲しくなってしまいます。

その後、私は退職したので、今現在がどうなっているのか分かりませんが、とても本部と店の間が上手くいっているとは思えません。まさにこの机上の空論的な本部の仕事の仕方が、現場を混乱させているのだと思います。

お殿様はしっかり会社の方向性を決めて貰えば、それで十分だと思いますf:id:x-japanese:20230125223035j:image