前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

312.私の会社員時代、やってらんない記憶.51

またこんな事もありました。この顧客はVIPの部類に入っていた上顧客でした。色々な弊社のクラブにも加入していて、ゴルフの会でも社長は常連でした。かなりの大口の受注を毎月くれていて、弊社との関係も良好だったのです。

そんな中でトラブルが起きたのです。いつもは集金は殆どが振込か手形なのですが、イベントのようなイレギュラーな売上があった時には現金で集金する事があったのです。それも数百万円とかなり大金なのです。担当はこの集金には毎回苦労しており、この集金に当たると一気にスケジュールが狂うと嘆いていました。そしてある日、この集金があった時の事です。その顧客の奥様から連絡がありました。内容は、置いてあったはずの現金が無くなっているけど、さっき集金に来ていた担当の人に思い当たる事は無いかとの事でした。どうも、弊社の担当が集金に行った際に、同じ所に置いてあった現金100万円が無くなってしまったとの事でした。この分は銀行に貯金するお金だったそうなのです。

早速、担当者が帰ってくるとその事を確認しました。当然の如く、担当者はキョトンとして、そんなお金は知らないと言いました。その態度にも不自然な所はありませんでした。そしてその事を奥様に連絡しました。それで終了と思いましたが、事態は厄介な事になって行くのでした。奥様はもう一度探してみると言って、一旦電話を切りましたが、その少し後に、やはり見つからないので弊社が多く集金したのではないか、と言って来たのです。その根拠は、この事務室には朝から奥さんしか入っておらず、その後も誰も出入りしなかったようなのです。そこに弊社の担当が集金に行きました。そしてその後、銀行が集金に来た時に、置いてあった現金が無かったと言うのです。

弊社の集金のシステムは、当時は既に機械化されていて集金があると機械に投入してレシートを取って、請求金額と合ったら終了という感じでした。寄って担当者のレシートを調べた所、請求金額と合っていて間違いは無かったのです。そのレシートを持って奥様の所に早速出向きました。

そこでは社長も心配そうにしていました。そして担当者から、先程の集金の手筈と集金した金額について、改めて説明しました。しかし奥様は確かにこの場所に置いてあった物が無くなっていると言うのです。そこは帳簿が置いてある棚の中でした。それが無くなっていると言うのです。その時から既に、この担当者を疑っている様子でした。レシートが合っていると言っても、お金を抜いたら分からないでしょう?、などという言葉も端々に出ていたからです。そして一旦中断して、終業後に再度、双方で確認してみる事でその場から帰ったのです。

私は早速、店長に報告。この時の店長も割合に話が分かる店長で幸いでした。一連の流れを説明すると、店長が一言、「君、本当にお金を取っていないんだろうな、誓うか?」と言ったのです。担当者は「勿論です」と言い切りました。すると店長は方針を決めました。弊社は間違っていない。相手の落ち度であるという事で、毅然とした態度を取ろう、という事になったのです。

そして翌日、私は奥様に電話をすると、やはり見つからないとの事。今度は店長と私と担当者で先方に訪問。昨日の方針通り、弊社で金額の間違いは見つからなかった、担当者からもしっかり事情聴取をしたが、間違いは見当たらなかったと説明しました。すると奥様は少し怒った口調で、それではこちらが間違っていると言うのかと言います。店長は、何かの勘違いではないかと説明します。両者はその後、膠着状態となり、また一旦中断となりました。

そしてその夜、終業後、再度訪問。今度は先方は社長も交え、話し合いという形で相談をしました。この事象をどう片付けるか。双方で話し合いを行ったのです。社長は両成敗という事で半々で負担するのはどうかと提案しますが、店長はそれには難色を示します。そしてまた一旦中断。帰って本部へ連絡。もし揉めるようなら応援よろしくとの承諾を取っていました。そして、店長はこれ以上揉めて相手も引かない場合は、残念だが取引解消も仕方無しの結論を出します。この店長の判断は、私に「覚悟」という物の必要性を感じさせてくれた一言で、前回のブログはこの一件を経験したからこそ、出来た決断だったのです。

そして翌日、再度、話し合いに行きました。しかし双方の言い分は平行線。重い雰囲気になって行きました。奥様もこれ以上認めないなら、と言ったニュアンスで話をして来るようになりました。しかし店長も引き下がりません。そして、また一旦中断。

重々しい雰囲気の中で会社に帰りましたが、あの雰囲気は今でも忘れる事が出来ません。そして昼飯を食べて、終業後の訪問に備えていた時です。店長が私と担当者を呼びに来ました。何だろうと思って、指示された応接室に行くと、何とその社長と奥様が立っていました。???の顔をしていると、奥様が泣きながら「ごめんなさいね、棚の間の奥まった所に現金が挟まっていたの」と言ったのです。私と担当者は腰が抜けたとはこの事かの如く、やってらんね〜、とその場にへたり込んでしまいました。社長は平謝り。大きな菓子折りを差し出して、何とか勘弁して頂きたいと土下座する勢いでした。店長はとにかく良かった良かったの大合唱。

その日は営業と店長で飲みに行き、久しぶりの開放感を味わいました。こう言った信頼は、その部下にはとても良いモチベーションが育まれます。顧客からも、これを契機に益々取引を深めたいとの言葉を貰いました。まさしく、雨降って地固まる。その部下はその後、体調を崩し事務部に移りましたが、その前向きな仕事ぶりはとても会社内で評判となり、業績にも貢献していたのです。人が人を作る。こんな言葉をこの事件から実感しました。

上司と部下の間の信頼は本当に大切です。信頼は本当にやる気のモチベーションが上がりますf:id:x-japanese:20220823152323j:image