前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

298.私の会社員時代、やってらんない記憶.43

前回イカした社員や凄い社員の事を書きましたが、長い間の会社員生活では、社長や役員、店長やリーダークラスになれば「さすが」と思う人は結構しましたが、それは当然の事。バカ店長のように逆に尊敬されない方がおかしいのです。そして先輩や後輩の中には、前述のように新規開拓だけは凄いとか、販売金額だけは凄いとか、単発で凄い奴は結構いました。それはそれで尊敬に値しますが、やはり総合的に凄いと思ったのは290回目のイカした2人しかいませんでした。

そんな中でもう1人、凄い奴がいたのです。それは他社の営業担当でした。営業地区が被る他社とは、同業者同士で顧客の奪い合い、受注の取り合いは日常茶飯事。営業担当は、売上アップや回収はもちろん、この他社による攻勢に負けない事も大切な任務でした。この担当の会社は弊社よりも大きく、担当は私より7歳位上で、私は、規模面でも営業の経験面でも随分と泣かされたのを覚えています。この担当と地域が被ったのは、営業を出てから3年目前後でした。1年半位でしたが、5件位は取引を取られてしまったので、その辺のストレスも相当な物でした。この担当はとにかくやる事が凄くて、普通、取引移行はその翌月から売上が移るものですが、今の在庫から全て移行する手続きをする物ですから、その月は返品の嵐となります。今までの常識が覆されるやり方ばかりで、その容赦無い対応には担当だけでなく会社としてもダメージのあるやり方でした。

しかしその他社の担当は、仕事のやり方とは裏腹に、私に対してとてもフレンドリーだったのです。まあカモと見られていたとも言えますが😤、顧客に訪問するとよく鉢合わせる事も多かったのです。その都度、色々と営業のレクチャーをしてくれました。特に業界の情報や法律的な事をよく教えてくれました。そして、時折、規模的に合わない小規模な会社を紹介してくれたりしていました。私はいつも敵ながら天晴れという感じで、こいつには敵わないと思っていました。

そしてある日、弊社がサブの顧客へ訪問した時です。この担当の会社がメイン先でした。そしてその担当がそこにいて顧客とダベっている所でした。私も上がらせて貰い、一緒に会話に入りました。その後、その担当はお先にと言って帰り支度を始めました。すると奥さんが、「先日の話、ちゃんと分かってるの?」と言いました。するとその担当は「もう決裁になっていて、あとは奥さんのゴーサインを待つだけ」と言って帰って行きました。

その後、奥さんが私に向かって、「分かっているのか本当に不思議。いつもしっかり聞いているのかいないのか、でもちゃんとこちらの希望通りの事をやってくれる。本当に不思議な担当だわ」、と言うのです。奥さんに確認すると、来月大きな発注があるのだけど、疎明資料は出した事が無いのだそうだす。いつも大体こんな感じでちゃんとした話もした事が無く、でもこちらの希望はしっかり対応してくれると言うのです。そんな事が可能なのか、私は不思議でなりませんでした。

ある日、この担当と道路で鉢合わせしました。すると、お茶でもしないかと誘ってくれました。時折この担当はこんな感じでフレンドリーに話し掛けて来るのです。そしてこの時、私は先日の奥さんの話を聞いてみたのです。するとこんな感じで答えたのです。「会話だよ、会話。日頃の会話から大体の会社の流れが分かるだろう?」と言うのです。「そして、はい、いいえ、で答えられる会話はしない。ここにこちらが聞きたい事を混ぜて会話をすれば、案件の具合も分かるし、いつ頃どれ位商品が必要か、どれ位頑張ればいいのか、見当がつくだろう?、それを後でちょっと確認すればおしまい」と言ったのです。「失礼だけど君の会社の事も、その会話から大体見当がついたよ」、と言ったのです。

これには私は本当に驚きました。こんな事が本当に出来る物なのか、そしてその会話術はどうしたら身に付くのか、その後私は、顧客との会話について勉強しました。会話から情報を引き出すにはどうしたらいいのか、それは心理学の方面まで及びました。その後、その担当は転勤、そしてそれ以降、顧客の取引が奪われる事はありませんでした。私もこの担当に負けまいと切磋琢磨したのです。そして、その後、私にも多少の効果が出てきたようで、移行された数社は取り返す事が出来ましたし、違った他社からの取引移行も出来る様になったのでした。

そしてこの時、改めて、本当の競争とは会社の中では無く、外部で繰り広げられている事を認識しました。会社の中で、と言うよりは、他社に負けないように頑張らないといけないと、私の目は絶えず外に向かうようになったのです。店の中でゴチャゴチャ争っても意味が無いと思うようになったのでした。そして今考えても、あの担当は凄かったと思います。そして、私の営業姿勢にとても影響を与えたのでした。

聳え立つようなライバルの存在は、人を大きくしてくれると思っています。f:id:x-japanese:20220902090606j:image