前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

299.私の会社員時代、やってらんない記憶.44

イカしたシリーズではこの3人+アルファーを書きましたが、その他尊敬できる店長やリーダーと言うとは確かに結構いしました。その中で、当時弊社内で、営業の神様と言われていた店長が私の店におり、その人の事を書こうと思います。

この店長、麻雀系の人で、私もまだ新人営業でペーペーの頃だったので、あまり接点はありませんでした。またちょっとセコい所があったり、結構茶化す所があったので、あまり好きなタイプではありませんでした。しかし時折、顧客への挨拶方々、同行訪問をしてくれたのです。その時に、商売に対しては本当に凄いと思った事が結構ありました。そしてこの訪問の時にも、私の事を茶化すのです。「君、販売の数字を上げるにはどうしたらいいと思う?」と、言った具合です。私は、顧客のニーズを掴むとか商品の品揃えをよくする、等の回答をしていると、「簡単だよ、他社より値段を安くすればいいんだよ」と大笑いするのです。

そして次の訪問の時には、「商品を安く売るとどうなると思う?」と言った具合に聞いてきます。私が、利益が少なくなると言うと、「そう、だから安く売る奴はバカって事」と言い、「じゃあ、どうする?」と言った具合で、延々と聞いて来るのです。「高い値段で売る事が出来る営業が、最高って事だ」「じゃあ、高い値段で売って、お客さんが怒らないようにするにはどうしたらいい?」と、まるで禅問答のようで、私は結構これが苦手だったのです。

そうかと思うと、ある案件で事務と揉めていたりする場面で、「この客は大丈夫」とか「こいつは慎重に」とか言うのです。次の同行訪問でこの話を聞くと、「笑い方が違うだろう」とか「貧乏人の人相だ」とか「会社が綺麗だ」とか、全く財務や担保といった事とは関係無い話をするのです。これにも禅問答のようで、私には皆目分からなかったのです。

そしてある日、私の上顧客から商品の値段の問い合わせがありました。他社の方が安いと言って来たのです。そして私は次の販売分から、値段を下げる相談を事務としたのです。するとこの店長が出てきて、「君、この前、安く売るとどうなるか、考えたよな」と言って、値段を下げる事には印鑑を押してくれませんでした。「ただのバカな営業になるのか?」と言って、「まだ時間はある、もう少し考えろ」と言われたのです。

しかしそんな事を言われても、まだ営業になって数年、そんな知恵はありません。先輩に聞いても教えてくれません。それはイジメでは無く、本当に先輩達でも分からない様子だったのです。値段を下げずにお客さんに喜んでもらえる事を、その後もひたすら考えました。しかしそんな矛盾するような話、解決する訳がありません。そしてそれからは、あらゆる顧客の販売値段を見てみる事にしたのです。すると思わぬ数字が出てきたのです。取引条件によって販売価格が違う事に気がついたのです。例えば保証金内の販売ならば、弊社としては取りっぱぐれが無いので結構安い価格になっています。しかし信用して販売する場合には、その販売価格は高くなっています。今となっては当たり前なのですが、この頃はこんな事も気がつかなかったのです。

そしてこの時に、確か円高関連の補助金のような物がある事に気がつき、今で言う旅行業界のGOTOキャンペーンのような物がある事が分かったのでした。これを噛ませれば、この顧客の信用額に適用させ、補助金の分を安くする事が可能となったのです。また値下げ分を金額にするのでは無く、メーカーから協賛品を出させて、その分を値下げ分として販売するという手法も見つけたのです。

それを店長に報告しました。するとその店長は、まるで、ターミネーターの最後のシーンのように親指を上に差し出した仕草をしてくれました。これは苦労した分、凄く嬉しかったのを覚えています。この店長はその後も色々と、営業のやり方のヒントをくれました。そしてその中で一番為になったのは、数字や財務では無く、人相とか社相という物でした。人相については、店長の言う事は理解出来なかったので、本を読んで勉強しました。しかし簡単に言うと、大きな声、豪快な笑い方、口角が上がった顔といった感じでした。また社相というのは、簡単に言えば整理整頓でした。とにかく汚れている、どこか雑然とした会社は社相が悪いと、よく言っていました。

これは一言で言うと、「勘」と言う物なのでしょう。これを養うには相当な経験や実践、勉強等が必要と思います。私も営業のベテランの部類になってくると、この店長のような境地になれてきたのを覚えています。今はこんな「勘」に頼った営業なんてしないのでしょう。しかし「勘」は営業には必要だと思います。こんな勘も働かない連中が増えた事も、閉塞感を産む原因のような気がしてのらないのは、私だけでしょうか?。

この店長は最後に私にこう言って転勤して行きました。「儲かるって字、どう書く?。信者と書くだろう。君の信者をたくさん作る事。これが営業の秘訣だ」。何かカッコイイですよね😊。

上には上がいる、という感情を抱ける人は、きっと成長すると思っています。f:id:x-japanese:20220902091940j:image