前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

436.私の会社員時代、やってらんない記憶.98

これはある新規訪問の時の話です。これもマンガかよって出来事で、本当にこんな事があるのかって笑ってしまう事象だったのです。これは随分と遡り、私が営業に出て数年経った苦悩の時期の話です。業績は上がらず、既存の顧客からは頼りなく扱われ、先輩達からのイジメも収まる事は無く、本当に辛い毎日が続き、いつ辞めてやろうかと考えていた時期でもあったのです。

そんな中でも、負けるものかと何とか頑張って、仕事をしていました。しかし現実は厳しく、その後も顧客からは、私を飛び越して以前の担当者である先輩に声が掛かる事は多く、私の存在価値を否定されるような事象がたくさんありました。今でなら考えられない事でしょうが、この頃はこんな感じで、ただひたすらこの屈辱に我慢するしか無かったのです。

しかし、こんな日々を続けているとある事に気がつきました。それは当然な事なのですが、前任の先輩とソリが合わない顧客もいたのです。そういった顧客は逆に私を可愛がってくれて、応援してくれるような感じの人もいたのでした。また、これも当然なのですが、私が取った新規顧客は先輩を知りません。なので私を飛び越えるなんて事象は起こらないのでした。私はある日この事に気がつき、ならば新しい顧客を紹介して貰ったり、または獲得したりして、新規顧客を増やせばいいのだと思い、ある時から新規顧客の開拓に力を入れたのでした。

最初に取り組んだのが、新規顧客の紹介でした。そして次にコツコツやる新規の飛び込み訪問です。前者は最初のうちは成功して、それなりの新規顧客を取る事が出来ましたがその後はそれも尽きて来て、単独で行う地道な新規の飛び込み訪問を続けていたのでした。そしてこの飛び込み訪問は本当に気が滅入ります。中には何度も訪問していると怒られたり、二度と来るなと言われたりと、それはそれは意気消沈していく活動なのです。

しかし時には、「あんたもひつこいねー」などと言いながらお付き合いしてくれたり、たまたま今までの業者とトラブルがあって、弊社と取引出来るかなんて電話があったりと、効率は悪かったですが、月に数件ずつ、新しい顧客が増えて行ったのでした。しかし獲得出来る顧客は、紹介でも無い限り大きな顧客はいなかったのでした。こんな新人に毛の生えた程度の人間では、さすがに取引の無い大きな会社には中々入る事も出来ません。気後れもしますし、第一、決裁権も無いので、話すのも無駄と仕入担当の人などは敬遠するものです。そしてこのマンガかよ、の事象はそんな時に起こりました。

この時は、自分が新規訪問しやすそうな会社は殆ど無くなって来ており、少し規模の大きめな会社に行ってみるかと、覚悟を決めて訪問してみたのでした。しかし会社の入口の前に行くと、足がすくんでしまいます。それでも思い切って入口の扉を開けて入ってみる活動をするようになりました。当然、門前払いが殆どでした。しかし、ある日の事です。この日もある会社に思い切って飛び込み訪問をしました。扉を開けて、「仕入れか経理の担当者の方はいらっしゃいますか?」と聞いたところ、何と「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」と応接室に通してくれたのでした。私はビックリしながらも応接室へ招かれ、そこにやって来たのは経理をやっている奥様でした。

「全くもう、やってあげると言ったのにいつまで経っても来ないから、もう止めようと思ってたのよ」と言うのです。私は何が何だか分からず、「すみません」と言って注文を受けたのでした。その内容は大した商品でも無く金額も大した事は無く、また信じられなかったのですが、最初は現金で払ってくれると言うのです。これなら売掛の心配も無い。私は早速書類を書いてもらい、その日のうちに商品を届けました。そして現金集金して、その日の新規顧客の報告書を作っていた時です。

するとそれを見ていた前任の担当の先輩が驚きの顔をしていたのです。そこは前の先輩がいくら行っても取引してくれなかった顧客だったそうなのです。先輩は、「どうやって取引して貰えたんだ?」と聞いて来ましたが、私は特別な事はしていないと答えました。その顧客は地元でも結構古くからの会社で業績も良く、ある程度の売掛けも全く心配無いような会社だったのでした。

そして翌月、私はまた注文を貰いに訪問しました。すると奥さんが出て来て、私にこう言ったのです。「あなた○○会社の人じゃないの?。先月、てっきりあなたを○○会社の担当だと思って取引しちゃったじゃ無い。でもこれも何かの縁だから、このまま取引してあげるわよ」「○○会社の担当が来ないのが悪いんだもんね」と言ったのでした。これにはあの時の流れが全て分かったのでした。○○会社の担当は、どこからかの紹介を貰い訪問していて、その結果、奥さんが取引してあげようと連絡をしていたそうなのです。しかし直ぐにはその担当は来なかったそうなのです。そこに偶然私が飛び込みで訪問したものですから、奥さんは私がその担当だと思ったのだそうです。どうも、その担当は私の後に来て、可哀想な事に取引はして貰えなかったそうなのでした。

こんな偶然ってあるんだなあと、私はしみじみ思ったのでした。こんなマンガみたいな事は、きっと日々一生懸命やっていたご褒美に違いないと、私は思ったのでした。しかしこんな事は滅多に起こる事は無いのです。こんな事をまた期待する事を「取らぬ狸の皮算用」と言うのでしょう。昔、学生の時、こういった「トラタヌ人間」は結構いて、自分はあのような人間にはなるまいと思ったものでした。その後は、このような経験は当然ながら一切無し。ペーペー営業の苦戦はまだまだ続いたのでした。

先日、西武線リバイバル塗装の電車を見て、本当にビックリ。昔に戻ったような錯覚はタイムマシンのよう。まるでマンガの世界でした😅f:id:x-japanese:20221205155813j:image