前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

332.私の会社員時代、やってらんない記憶.62

この国は、バブル期以降失われた20年と言われた日々が続いていて、さすがに経営が苦しくなってくる会社も増えて来ました。販売金額の回収もキツくなる顧客も増えて来ました。こうなると早く手を打たないと、どんどん回収が遅れて行きます。そして売掛金が溜まって行きます。こう言った顧客にはさまざまな対応をしていました。これは2000年を過ぎた頃の話で、この支払い遅延、所謂、延滞については色々と難しい話しが多く、分かりずらい点が多々あるので、ある程度省略して書きますのでご了承下さい。

この頃には、本部に管理部というものが出来て、延滞となった顧客を専門に対応する部署が出来たのです。そして彼等の方針は、こう言った延滞先を不良債権先と位置付けて、結構強引な回収や整理をするようになったのです。これは金融機関からの格付けの影響もあったのです。決算がいくら順調でも、売掛金不良債権になっていないかを、金融機関はとてもシビアに見てくるそうなのです。だからと言って、今まで協力してくれた顧客や長い間お付き合いしてくれた顧客を、すぐに回収に掛かり取引を引き上げるというのは店や担当者としては耐えられませんでした。

延滞が発生すると、引当金という手続きをするのです。これは単純に言うと、この売上の分を危険度に応じて利益から除外させるのです。すると会社の利益が当然減ります。そして一番いいのは、その後その延滞先が正常に戻る事なのですが、中々そんな事は無くそのまま推移する事が多かったのです。この件数は徐々に膨らんで来ました。そして世の中は金融機関中心に不良債権の処理に躍起になるようになります。弊社に至っても、どうせ利益からある程度除外されている顧客です。管理する面倒も大変な為、この顧客を整理して行くようになって行ったのです。

そしてある日、管理部の人が店に来て、色々と指導をして行った後、飲みに行った時の事です。酔いも回って来て、その管理部の人は口が滑らかになり、持論を喋り出します。「大体既に利益から除外されているのだから、こんな顧客はどんどんと整理していくべきなんだ」。そして、延滞処理の決算上の影響とか財務の影響、税金の影響等を鼻高々と話し始めたのです。そこにいた全員はそれに何も言えず、ただ聞いていました。しかし私は何か釈然としなかったのです。細かく言うと難しくなるので、ざっくりした説明になりますが、そもそも延滞が発生した時に利益面から除外されるのであれば、その後の処理はいつやろうが関係無いのでは無いかと、私は思っていたのです。確かに管理する顧客が増えるので大変かと思います。金融機関の調査でも中々説明が大変だとは思います。しかし、そうされた顧客の事はこれっぽっちも考えていないのです。

私はこう言った顧客に対しては持論を持っていました。延滞になっている金額に金利を付けて(その分、販売価格にプラスするという事です)、それを了承してくれる顧客には信用枠を設けて引き続き販売を続けて行くのです。販売に対する決算上の利益にはならなくても、滞っている売掛金に対して利息という収入が生まれます。そしてこれをやる事により、顧客はとても弊社に対して恩を感じます。そしてもし、何かの機会にこの顧客が正常化された時は、絶対に弊社にイニシアチブが発生するのです。実際にそう言った事例はあったのです。

延滞したから縁を切るというこの管理の人の話は納得出来ませんでした。そして我が闘争が始まりました。「お言葉ですが、私はさっきからの延滞先に対する対応は、賛成出来ません」、と私の理論を話したのです。すると管理の人はギョッとした顔で、「分かってないからそんな甘い事を言うのだ」と私の事を一蹴し、「管理の世界はそんなに生優しい物では無い」と言ったのです。しかし私も黙っていません。「確かに管理する数が増える事と対金融機関の対応は大変でしょう。しかしそんな事を続けたら、どんどん顧客が減って行きますよ。利益はどう確保して行くのですか?そしてそんな顧客もしっかり経営を続けているのです」。すると問題外と言った態度で相手にしてくれなくなってしまいました。私はこの後も私の顧客を例にして詳細な説明をし、利益面、財政面、税制面と細かく説明をして、この管理の人に意見を求めました。しかし相手にはされませんでした。

この話はもっと詳しく説明が必要で、それが分かればもっと理解出来る内容だと思います。この時も随分と事例と数字を持ち出し、この管理部の人に説明しましたが、最後には、それが会社の方針なのだから仕方ないだろうと言われてしまいました。おそらく私に反論が出来なくなったのです。しかし、私としてもこの会社の流れにはどうする事も出来ず、その以降は特に何をする訳ではありませんでした。

そして数年が経過、すると驚いた事が起きました。管理部で、延滞先の扱い方という事例が報告されたのです。これに私は愕然としました。私がその時言っていた事とほぼ同じ内容だったのです。延滞先も直ぐには整理せず、延滞した金額の金利分を上乗せして販売を行い、一定額を限度に支援して行く。そうすれば利益と今後の取引が期待出来るとの事でした。ある会社からの情報を元に、この対応を考えたと言ってましたが、これには本当にやってらんね〜と思いました。その時の管理部の奴を出せと思いましたが、そいつは既に定年しており、いませんでした。

この会社、本当に商売人の息子である私から見ても、なんだかショボいなあとしみじみ感じた事案でした。コンプラに洗脳された人間には思いも付かない事なのでしょう。そして内部からの提案はプライドがそうさせず、外部からの提案はホイホイと受け入れる、まさに馬鹿げた事が行われていたのです。一番会社の事を知っているのは社員なのです。あるコンサルタントの社員が言っていました。会社からコンサルを頼まれると、まず社員のヒアリングから始めるそうです。そして、ここに大体の正解が埋まっているというのです。今も会社は、相変わらずこんな感じなのでしょうか。本当にやってられないと思います。

枯れても来年はまた新芽を出す木のように、復活する顧客だって結構いたのですf:id:x-japanese:20221218222851j:image