前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

327.私の会社員時代、やってらんない記憶.59

固すぎる条件にも困ったものでした。大きい取引になればなるほど、条件が付く可能性は大きくなるので、それで営業と事務はいつも睨み合いになる事が多かったのです。

ある時、いつもはそれ程大きく無い取引先から、大きな受注がありました。それは本当に単発でした。なので、その分、支払が完了するまでは保証金を積んで貰い対処する事で、稟議書は決裁になったのです。しかしこの案件はこれからが大変なのでした。この案件、当初は部下が受けて来た案件で、一回否決になった案件だったのです。それを上司であった私が応援して決裁になったのでした。そして後は事務上の手続きだけですから、担当者に任せていました。

するとこの顧客から、私の所に苦情が入りました。内容は保証金の件でした。この会社はそれ程の優良な会社では無く、個人的にもそれ程資金力はありませんでした。なので、保証金の一部は兄弟から一時的に借りて工面するそうなのです。しかし資金は当日の振込と言われてしまったようなのでした。それを担当者に伝えると、それでは対応が難しいと言われたとの事でした。

私は電話を切り、「そんな事、事務と話し合えばいいのに!」と、その後、担当者を飛び出し、顧客の苦情を伝えました。すると、保証金は前日までが決まりなので受け付けられないと言うのです。続けて事務方がそう言ったと言うのです。そう言われたから、そのまま顧客に言ってしまうのも、営業担当者としてどうかと思いましたが、私は急いで事務方に行きました。

そして、この経緯について説明をしました。確かに保証金は前日までに振り込まれるのが好ましいが、それは決まりでは無いはず。当日の販売に間に合えば、条件違反にはならないはず、と言いました。しかし事務は原則、保証金は前日振込だと曲げません。私もそれは原則だろうと食い下がります。するとまた店内で騒ぎとなります。この判断は結局、店長に委ねられる事になりました。事務はそこで原則の話をしました。私はそれは原則であり、販売までに資金が振り込まれれば良しとして欲しいと言いました。店長もリーダーも困惑してしまい、暫くその話し合いが続きました。そして我が闘争が始まりました。

なぜ前日という原則曲げないのか、それに何の意味があるのか、この顧客は少額ながらも固い商売をしているし人間性も誠実である、と畳み掛けました。事務も引きません。この会社からすると金額が大き過ぎるし、一回だけというのも怪しい。この商品を転売して夜逃げでも計画しているのではないか、と言って来ます。そんな言い合いが続きました。そして事務方が最後に、もし明日、資金が振り込まれ無かったらどうするのか?と、私に問い正しました。事務方からすると、これが「葵の御紋」のような切り札だったのでしょう。まさに、どうだ、グーの根もないだろう、と言った表情でした。

私はそれに対して、すかさず、「だったら商品を販売しなきゃいい」と突っぱねました。事務方は当日に販売をしないと言うのは酷いのではと言いますが、それは事前に先方に伝えておけばいいと言いました。それ以上、事務方は何も言えず、その後は暫く沈黙が続きました。最終的に店長は、私の意見を取ってくれました。そして確かに事務の言う事も分かるので、明日振込が無い場合は商品は販売出来ない事をしっかりと伝えておくように、という結論でした。

そして担当者と一緒に顧客へ訪問。無事に当日の振込で大丈夫な旨を伝えました。そして振込を確認出来ないと販売は出来ない旨もしっかりと伝えました。帰り際には、担当者からお礼の言葉がありましたが、別に礼なんて必要無く、顧客の為にはこの位の闘争心が必要だという事を、しっかりと伝えました。私は本当に自分が戦う姿を見て欲しい、経験として心に植え付けて欲しいと思っていたのです。そして、今考えると、この頃から、どこか自分の実家と顧客を重ねて対応していたように思います。稟議の合否では無く、実家を守るような、そんな気概で顧客と付き合い、自分の会社と対峙していたように思います。だからこそ、気合も入っていたのでしょう。

皆んなが同じ方向を向く事も必要ですが、時には別の方向を見てみる時も必要です。f:id:x-japanese:20220825232342j:image