前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

61.自己嫌悪

その後、何とか気を取り直して食事に向かいました。相変わらず20人近くの人がおり、私みたいな感じの人は見当たりません。会話をしている人、テレビを見ている人、ケータイをいじっている人、周りの人達が皆、順調に治療を受けているように見えます。

この人達は絶対今さっき重粒子治療を行って、自分と同じような境遇のはずなのに大丈夫だったのだろうか。この日は後から行ったせいか、同室の方と一緒のテーブルになれず、一人で黙ったまま食事をとり、そそくさとベッドに潜り込んでしまいました。

その時は自分一人が治療が上手く行ってないんじゃないかという疎外感に苛まれ、辛かった思い出があります。様子を見に来てくれる看護師さんにこの状況を話せば良かったのでしょうが、逆に何言ってるの、みたいな事を言われるんじゃないかと相談もできず、悶々とベッドで丸まっていました。

夜、妻にメールした時もこの事はそれほど触れずにいました。余計な心配をさせたくなく、途中で治療を止めるような弱音は見せないようにしました。折角ここまで来たのだからこんな事で挫けられない。今にも折れそうな心をどうやって立て直すか、そんな事を考えているとその夜もまた眠れなくなり、縋るように聴いたX-JAPANの音楽が忘れられません。

いつも苦しい時、辛い時、何かに詰まった時にはこの音楽に癒されて幾度となく復活して来た私、今回も押し潰されそうな現状を打破出来るよう、寄り添ってくれると信じて、ベッドの中で夜が更けるまでずっと聴いていました。

皆さんはこのグループのドキュメンタリー映画「We are X」をご覧になった事があるでしょうか? その最後にメンバーが語る「Xの音楽は傷を負った人に寄り添い、一緒に前を向いて進んでくれる、そんな音なんです。」という言葉があるのですが、まさにこの時がそんな感じでした。

X-JAPANYOSHIKIのクリスタルドラムセットf:id:x-japanese:20210329145026j:image