やっと体制が整ったのか、先生達がササっと居なくなりました。今度こそ始まると気合を入れ直しました。私は既に照射が始まっているものと思い、多少緊張しながらも身体を絶対に動かさないよう、頑張っていました。
そんな時にマイクの声がしました。「もう少し左の腰を浮かして下さい」と、先生から指示がありました。あれ?まだ照射してなかったのか、と、急に力が抜けました。少し腰を浮かせてみて、またじっとしています。すると再度マイクの声。これが5回位ありました。
私が初めてだからか、中々照射の的が決まらないようです。暫く静寂の時間が過ぎた時、今度はいきなり扉が開き、先生がやって来ました。ほんの少し腰を浮かせて戻って行きました。すると今度はまた暫く静寂の時間。また扉が開いて、今度は足を少しだけ引っ張りました。私は、こんなにも微調整が必要なのかと驚き、逆に少しでも的が狂うと本当に他の臓器に当たっちゃうんじゃないかと、次第に怖くなって来ました。
この後も微調整の繰り返しが結構続きました。これには精神的に参りました。ここまで微調整を繰り返すという事は、それだけピンポイントで患部を照射するのは難しい事なのか、そう考えるとこれまでの緊張感とは比較にならない位に恐怖感を伴った緊張感に身体中が硬直していくように感じました。
こんな事を数回行っているうち、マイクから声がしました。「これから照射を始めます。時間は数分ですが、絶対に身体を動かさないで下さい。そして息もなるべく軽くするようにして下さい。それでは行います」。えーっいきなり?。恐怖と緊張が入り乱れている中、一旦緩んだ心の準備が出来ないまま「ちょっと待って!」という感じでしたが、とにかく動かないようにしないと、と必死で身体が動かないようじっとしていました。この時は、動くと他の臓器に当たるんだと思うとそれは恐ろしかったのを覚えています。ほんの数分なのでしょうが、この時は数十分位に感じるほど終わるまでが長く感じました。
雪が残る夏の群馬県一ノ倉沢