前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

59.静止のプレッシャー

新治療研究室に入り受付をして椅子に座りました。たった4日前に来ているのに随分経ったような感じに思えました。そして、忘れていた例の音が、奥の方から聞こえてきました。

すると急にあの時の緊張感が蘇ってきました。照射がずれると他の臓器がやられてしまうという緊迫感の中、またあの静止状態を続けるのかと思いました。先程までは気合いを入れて早く呼ばれないか待っていましたが、今は心の準備が出来るまで呼ばないで欲しいと思っています。あのプレッシャーを乗り越えるにはどうすればいいのか、まだ答えはありません。

そうこうしているうちに、私の名前が呼ばれました。こういう心境の時は時間が過ぎるのが早く感じます。もう呼ばれたのかと時計を確認すると、しっかり30分位経っていました。照射室前の腰掛けに座り、どんどんと高鳴ってくる胸の鼓動を抑えつつ、何とか対処する方法を考えていましたが、タイムアップ。照射室の扉が開き、名前が呼ばれました。

先生達はいつものように、優しげに淡々と対応してくれています。着替えをし照射台に乗ると、先日と同じ固定具の取り付けが始まり、身体の調整が始まります。もう既に5時近いのではないでしょうか。先生達も疲れてそうで大変そうです。それを見て私も緊張感が高まってきます。

先生達が疲れると照射の正確性に狂いは生じないのだろうか?、そんな事を考えると、身体がさらに強張ってきます。そうこうしているうちに身体の位置も決まり、いよいよ照射が始まる合図がありました。落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせて、とにかく余計な事を考えず時間が過ぎるのを待つだけを心掛ける、それだけなのですが、この緊張感はどうしようもありません。

照射は本当に痛くも痒くもないので、先生の合図の後はいつ始まるのかは分かりません。もう始まっているんだろうと思うと、心と身体は別物なのでしょうか、思いとは逆に足がガクガク震えてくるように感じます。そんな事は無いはずなのに、これは一体何なんでしょうか?

静岡県河津七滝伊豆の踊子f:id:x-japanese:20210326180051j:image