前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

49.照射終了

もう照射が始まっているでしょう、その間必死という言葉しか見当たらない、照射中のじっとしている時間。痛さとか熱さとかを感じている暇も無く、早く時が経ってくれっ、と心の中で呟きながら我慢していました。身体にうっすら冷や汗を感じます。心では静止するよう頑張っていますが、何だか身体が勝手に動いている錯覚に襲われてきます。動いたら他の臓器に当たるというのが恐怖感となり、思わず叫びたくなる心境に駆られました。いつまでやるんだろう、もう限界と思った時、扉が開き、先生が駆け寄って来ました。

「はい終了です。お疲れ様でした」。やっと終わったかといった安堵感を感じ、はぁーと息をついてその場でゆっくりしていたい気分でしたが、先生達はそそくさと固定具を外しにかかり、照射台からゆっくり降りるよう促します。そう、照射が終わると早く引き上げないといけないのです。外には次の患者が待っているのでしょう。丁寧な中にもせかす感じがとても印象的でした。照射は成功したのか、先生に聞きたいと思っていたのですが、そんな暇は無く聞く雰囲気でも無く、先程着替えた場所に連れていかれ着替えをして帰って下さいと指示されました。

着替えをしていると、身体にどっと疲れを感じました。これまでに味わった事の無い恐怖感と緊張感の入り混じった感覚。当初、照射はただ寝てればいい位のお気楽な認識しかしていなかったので、このギャップには本当に参りました。

着替えて、先生達に御礼をして、照射室を出ました。先程座っていた椅子には次の患者が待機していました。先生達は事務的でもなく冷たくもなく、どちらかと言うと優しい感じで終始対応してくれました。帰る時もお疲れ様という態度で接してくれました。しかし、私はとてもこのまま病室に帰る気力が無く、受付まで歩くと近くのソファに座り込んでしまいました。

群馬県四万温泉の、映画「千と千尋の神隠し」のモデル、積善館f:id:x-japanese:20210325111451j:image