前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

55.久しぶりの鉄ちゃん

病院には夜の8時までに帰れば良かったので、家でまったりとしている時間はたっぷりありました。かと言って何かする訳でも無く、暫くボンヤリとしていました。

何気なく愛犬とテレビを見ていると再放送なのか旅番組をやっていました。すると、さっきまで家を出たくないと思っていた自分はどこへやら。突然、私の鉄ちゃんの虫が動き出しました。私は前からある鉄道に興味を持っていました。そこは千葉県の法医研のある稲毛駅から30分位でした。今まで全く気が付かなかった事が不思議でした。それだけこの病気に参っており、そんな余裕も無かったのでしょう。こりゃ、病院に帰る前にちょっと行ってみるかと思い、急にバタバタと準備をして愛犬に別れを告げ家を出ました。

目指すはJR内房線五井駅、ここの小湊鐵道がまだディーゼルカーで運行されており、木造の駅舎もたくさん残っていて、昔、私が一人旅をしていた頃の国鉄みたいで中々いい雰囲気なのです。時間的にもちょうど良く、ここに寄って病院へ帰る事にしました。

こうなると一気に鉄ちゃん仕様に変身。治療の事はどこへやら、せっかくだから総武線快速グリーン車でも乗って行くかって、わざと遠回りなルートを考え東京駅に向かい、総武線快速に乗り継ぎ五井駅を目指しました。平日の昼間、グリーン車は空いており快適な旅を満喫。ビールが飲めなかったのが残念でしたが、それでもグリーン車の2階から見る眺めは最高でした。五井駅小湊鐵道に乗り換え、ディーゼルカーを満喫する小旅行に出発、途中古い駅舎も堪能できました。

映画のフーテンの寅さんのような旅が大好きなので、とある木造の小駅で下車、列車が行ってしまった後に駅のホームに佇み、ボーッとしている時間は最高でした。途中、猫がやって来たりして、そんな駅で日が暮れそうになるまで遊んでいました。夏の晴れた日の夕暮れ時は本当に最高です。電化されてない為架線の張ってない駅構内は、スッキリ広々していて空が大きく高く見えて本当に気持ちいい空間です。そんな空間の中、井上陽水の「少年時代」の歌を思わず口ずさみながら猫と遊んでいました。入院中にこんな事が出来るなんて思ってもみませんでした。

そうこうしているうちに、あっという間に時は過ぎていきました。夏の日は長いので、まだ帰る時間じゃないだろうと思っていたらとんでもない時間になっていました。しかし、こういったローカル線は中々列車は来ない。大慌てで帰り、当初は稲毛駅で何か美味しいご飯でも食べて帰ろうと思っていたのですがそんな時間はもう無く、コンビニでお弁当を買って病院には8時ギリギリに着きました。

病院に戻るとスタッフステーションには誰もいません。どうしようと思っていると5階から看護師さんがやって来ました。心配していたとの事でちょっと悪い事しちゃったと反省しました。体調面を聞かれリストバンドをまた付けた後、看護師さんは5階に戻って行きました。その後、誰もいない食堂でコンビニ弁当を食べながら妻に今日の事をメールをしました。妻は少し呆れていましたが、「それだけ元気なら治療は上手くいくんじゃない?」と嬉しい励ましの言葉をくれました。

小湊鐵道ディーゼルカーと木造駅舎f:id:x-japanese:20210326101337j:image