前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

270.私の会社員時代、やってらんない記憶.22

コンプライアンスには私も随分と苦しめられました。特に営業部は本当にやりにくい時代になって来たのです。コンプライアンスとは直訳すると「法令遵守」です。日々の仕事は、いちいち会社の規定や事務要項に違反するのかを確認され、少しでもそれから外れるとアウト!という事になり、進まなくなります。要するに例外が認められなくなって来たのです。さらにこのコンプライアンスの過渡期は、所謂営業系の穏健派と事務系の堅実派がおり、判断がその人達により違うのも、現場の混乱を招きました。

特に本部検査については最悪でした。検査は複数グループがそれぞれ店を割り振り、年に1回程、訪問していました。そこで穏健派に当たるか堅実派に当たるかで、その年の検査の評価が大違いだったのです。検査は本来、事務がしっかりされているのかをチェックするのが仕事なのですが、この頃から事務ミスというか仕事のアラを探すような感じになって来ていました。堅実派に当たるとそれは目も当てられない感じでした。前年はそれで大丈夫だった事務が、この年は堅実派が来た事で全てダメ出しなんて言うのはザラで、ほんの少しのミスも敢えて指摘するのです。そんな事は日々の仕事上、全く関係無い事まで、コンプライアンス違反として報告されるのです。これでは溜まったもんじゃありません。

そして事務は益々厳しくなって行きました。これでは今までの当社のウリ、面倒見の良さのようなモノが全て否定されるようでした。そして全ての事務は例外無しで統一されて行きました。すると、上顧客も一般顧客も同じ対応をせざるを得ません。これでは、会社が同様に打ち出していた、上顧客の囲い込みは出来ません。ある程度融通が出来るからこそ、上顧客は当社と付き合ってくれているのです。そういったモノが全て否定されるのですから、どうやって上顧客を囲い込むのでしょうか。これは営業部として度々本部に意見をしていましたが、コンプラの流れには逆らえないと、殆どが聞き流されておりました。

営業としては本当にやってらんないコンプライアンス。しかしこれは私が退職するまで続いて行きました、と言うか延々にこれからも続くのでしょう。今でもこの国は、何か間違った方向にこのコンプラは進んでいる気がしてなりません。諸外国でもこんな運用をしているのか疑問です。ますます社会全体が縮こまって行くような感覚を覚えます。そしてこのコンプラで、私の退職間際に本当にやってらんない出来事が起こるのです。これは、退職を迎えてもこの会社に残る気が完璧に失せた決定的な出来事でした。

その時、私は既に本部にいました。そこに中堅の女性で中々帰らない社員がいたのです。確かに真面目で細かい仕事をする子で店からの評判もいいのですが、まず帰るのが遅いのです。当然この時は働き方改革の関係で退社時間はキッチリ決められていました。本部なので、店に手本を見せる意味でもそれは尚更でした。しかしいくら言っても聞かないのです。そしてある日、その子の直属の上司から私に相談が来ました。言う事を聞かずほとほと困っているようでした。確認すると確かに本部の部署で最後まで残っています。既に警備会社の人が巡回に回り出している時間です。私は2度その子の前まで行き、帰るように指示を出しました。その後も部下からは同様の指示を出させました。

しかしその後も残っている事が続きました。そして溜まり兼ねて、ある時私がキツめに3度目の注意をしました。するとその社員は突然泣き出し、それがパワハラ騒ぎになってしまったのです。この女性からの訴えは無かったのですが、直属の役員がこれにとてもナーバスになってしまい、私が注意を受けたのです。しかしこれにはこの役員も絡んでいるのです。何度言っても聞かないので、最後に少しキツい言い方をする事を了解して貰っていたのです。結局この女性にはお咎め無し。私が役員から厳重注意を受けたのです。これがこの会社人生の最後の「やってらんね〜」でした。

この国コンプライアンスとは一体何なのでしょう。繰り返しますが、何か方向性が間違っていると思うのは私だけなのでしょうか?。結果論ばかりで物を言う奴らが本当に多くなりました。そして、積極的に挑戦をするような人間が明らかに減って行きました。私でさえ会社員生活の晩年には、敢えて何かをやろうという気持ちは失せていました。何かをやろうとすると、リスクリスクと異口同音の嵐。失敗するような事があれば、学校の反省会のようにここぞとばかりに責められ懲罰を喰らいます。責め立てるそいつらは何かをやっているのか?、いえいえ、何もしていないので何も無いのです。何もしなければ責められる事もありません。こうやって何もしない連中が増えて行くのです。

これがこの国の失われた20年、30年の元凶だと思います。今、この国の問題となっている給料が増えないのも、会社の経営の連中が新しい事に挑戦せず、現状維持、前例踏襲ばかりして来たのが原因と思います。しかし利益は出さないとまずいので、経費節減はしっかりやる、と言うよりは、これしか利益を上げる手段が浮かばないのだと思います。ポストを削り人件費を削り事務費を削り、外注先や下請けには値下げ要求をこれでもかと行います。こんな事では先行きは縮こまっていくばかり。従業員も夢が無くなり、取引会社や下請け会社もたまりません。売り手良し、買い手良し、世間良しの「三方良し」の精神はどこへ行ったのでしょうか?。しかし、何かやって失敗したり業績が落ち込んでコンプラで問題になるよりも、この何もしないのが最善な策なのは新人社員でも分かります。

最近は、まるでテレビや新聞のコメンテーターのような奴らが本当に増えました。コンプラとは、口だけで仕事をしない奴ら、または自分に否があるのに注意を受けるとパワハラだと騒ぐ奴らの為の法律なのでしょうか。今となってはどうでもいいですが、本当にこの国の将来が心配になって来ます。

法令遵守も行き過ぎると本当にギスギスした職場になってしまいますf:id:x-japanese:20220808115954j:image