前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

208.鉄チャン旅行の思い出10 夜間撮影編

この夜間撮影は本当によくやりました。夜に撮影するならストロボを使えば簡単に出来ると思われますが、私が挑戦していたのは長時間露光です。ストロボとはフラッシュとも言い、一瞬の光を光らせ、その光で夜間や暗い所でも撮影が可能になるのですが、走行中の撮影で使うのは鉄チャンの掟ではタブーであり、夜間撮影イコール停車中という意識を持って撮影していました。

停車中でもストロボを使えばといいと思うかも知れませんが、まあ結婚式とかの人の行事系であれば使い勝手もいいのですが、こと車両の撮影ともなると、何か思った写真にならない事が多いのです。列車はとにかく大きいし長いし、全体的に光が当たる訳が無く、どうも尻切れトンボのような写真となってしまうのです。そこでどうすればいいかという事になります。鉄道系の雑誌を見ると、夜間にも関わらず綺麗な写真がたくさん出ています。自分もこのような写真を撮りたいと随分勉強したものでした。

とにかく手動のカメラで暗い所や夜間に撮影すると、光量不足となり結果的にそのまま撮ると、真っ暗や何が写っているか分からない写真になったり、ブレた写真になったりします。それではそういった場所で十分な光量を確保するにはどうしたらいいか。シャッタースピードを遅くすれば光が入って来る量が多くなる訳ですから、それが一番簡単なやり方です。またはフィルムの感度を上げる方法もありますが、これも後にやった事がありました。そしてシャッタースピードを遅くすると、今度は手ブレの心配が多くなります。そこで三脚の出番となります。

早速三脚を買い、いよいよ長時間露光の挑戦です。最初はカメラの露出のカラクリを勉強する事から始めました。この性質が分からないと応用が効かないのです。普段のいい天気の時での外の撮影は大体シャッタースピードが1/250、絞りが8といった感じです。これを動かすには相関関係が必要で覚えれば簡単なのですが、初めはこんがらがってしまっていました。例えばシャッタースピードを1/125に遅くする場合は、それだけ光が多く入って来るので絞りを11に絞るという具合です。シャッタースピードは高くなればブレを抑えられる事は分かってましたが、絞りは光の量の調整だけでは無く、ピントが合う距離を調整出来る事等をこの時初めて知りました。絞れば絞るほど長い距離の幅でピントが合うのです。逆にある一定の場所だけにピントを合わせたければ、絞りを1.4とかの開放に近い値にしてシャッタースピードを合わせればいいのです。

これは御殿場線沼津駅の旧型電車です。f:id:x-japanese:20220314210307j:image

この相関関係をしっかり頭に叩き込んで、実際の夜間の撮影現場に向かいます。三脚をセット。カメラを覗きながら露出を合わせます。シャッタースピードは1/15程度にまで落ちています。これに絞りを調整。同じ列車で5枚程度写します。これは周りにある電灯の影響や暗くなっている部分の写り具合を知る為です。後日出来上がった写真を比較。どれが良かったかを記録し、また同じ場所へ向かい今度は1/8や1/4等、色々試して、そしてその場所の光量を記録していました。次は更に暗い所で試してみて、色々なシチュエーションを記録しました。

これは青梅線の夜の信号場で交換待ちをする機関車です。こういった暗い所で照明が当たるような場所は中々難しかったです。f:id:x-japanese:20220314210839j:image

そして段々と思ったような夜間撮影が撮れるようになって来ました。そして次に試したのが、流し撮りと似た所があるのですが、止まっている車両と動いている車両を組み合わせ、シャッタースピードをさらに長時間にする事により動いている車両を流すのです。止まっている車両を浮き立たせる感じにする事で、とても綺麗な写真となるのです。特に夜の列車のライトや室内の電気を効果的に使い、光を帯のようにする事で、更に幻想的な写真にする事が出来ます。これはシャッターを数秒から数十秒開ける感じです。この間ずーっとシャッターを押しているのです。これも今までの夜間撮影の記録を基に計算し、挑戦していました。

すると思わぬ弊害が起きて来ます。数十秒シャッターを押していると、時には咳が出たり指がプルプルして来たりします。すると、三脚に固定されて動かないはずのカメラが小刻みに揺れたりするのでしょう。出来上がった写真に一部ブレたりしているのが見つかり、最初は原因が分からずに随分と悩みましたが、この対処法として、レリーズという部品を購入。シャッターに直接指で触れないようにして、その不具合を克服しました。

これは播但線普通列車と追い抜いて行く列車を撮影したものです。f:id:x-japanese:20220312180000j:image

この夜間撮影の暗さや、シチュエーション、撮りたいイメージごとに、カメラのシャッタースピード、露出を頭にインプットした結果、かなりの確率で夜間撮影は成功するようになり、友人からもその数式を教えて欲しいと言われる位になりました。

これは上野駅で撮影した私の大好きな機関車です。後ろの走って行く列車を効果的に使っています。

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この長時間露光は、例えば蒸気のような物では更に幻想的な写真になります。私がこの技法をマスターした時には既にSLは廃止となっており、試す機会は無かったのですが、SLの雑誌などを見てると一度でもいいから撮影してみたかったと思います。しかしその後、SLとは違いますが同じようなシチュエーションに遭遇するのです。それは紀伊半島を旅行した時の事、その時は客車の暖房に蒸気暖房という種類が使われていたため、客車の連結部分からはゆらゆらと蒸気が立ち込める光景を見たのです。思いも寄らなかった光景に夢中で撮影を試みます。しかしSLと違い、それ程の蒸気が出ている訳では無かったので、思うような写真にはなりませんでした。

その後は鉄チャンへの興味が薄れて行くに連れて、写真も撮る事は減って行き、その後はこの技法は妻との旅行や家族旅行の時の夜景の撮影に役立ちました。あの時整理していた、数式や相関図等もどこへ行ったか分からなくなっています。今思っているのは、一度でいいから夜のSLを撮影したいという事です。既に「SL夜汽車」なるイベント列車が群馬県で動いていたようですが、なかなか行く機会がありませんでした。今年はGWに少しSLが動くようですが、SL夜汽車がまた動くようなら是非行ってみたいと思っています。