前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

202.鉄チャン旅行の思い出4 恐怖編

鉄チャンをやっていると、楽しい経験や人生の糧となる経験等たくさん出来ましたが、その反面怖い思いもたくさんしました。今まで仲間から聞いた中で一番怖い話は北海道の常紋トンネルの話で、私は列車に乗って通った事はありました。これは調べてもらうとすぐに分かりますが、私は幸いそこまで怖い思いはした事はありませんでした。その中で二つ、私がした怖い思いを書こうと思います。

一つは、北海道でのSL撮影の時の話です。これは初日に夕張線の紅葉山という所まで行って、SLの引く貨物列車を撮りに行った時の事。3月終わり頃というのにまだまだ雪が多く、道路は何とか歩けましたが車が来ると怖いので少し道を外れると、今度は雪が腰の高さくらいまであり、思った場所まで行くのが困難な状況でした。そうこうするうちにSLがやって来る時間。我々は仕方なく場所を変え夕張線の鉄橋が見える所に向かうべく、川沿いの土手のような所を線路の方に歩いて行く事にして、撮影する所を探していました。そして、深い雪に足を取られながらも進んで行くと、そこを少し外れた友人が、スポッという感じで首だけ出ている感じで雪に埋まってしまいました。一生懸命友人を引っ張り出しますが中々這い上がれません。何とか事なきを得ましたが救い出すのに結構な時間がかかり、すぐにSLがやって来る時間になってしまいました。我々は急いで川の側まで移動し、何とか鉄橋を渡るSLを撮影する事ができ、大満足。さらにもう一本撮影すべく、道路まで戻りました。

しかし、戻るのも一苦労でした。友人も雪に埋まったりして大変だったなーと道路へ戻る途中、何気なく鉄橋の方を振り返ると、一瞬目を疑う光景が広がっていました。我々が撮影していた雪原の場所のすぐ横は直角に切り立った場所になっていて、すぐ下が川。さらに下の方が少し抉れている感じがしました。よく大雪や大雨で道路が見えずに足を取られたり滑ったりして流されて行方不明になる事故が毎年ニュースになっていますが、まさにその可能性があるような場所でSLの撮影をしていたのです。実際、友人は少し道を外れてだけで雪に埋まってしまいました。

これには我々は一瞬固まってしまいました。下手をするとあの土手の雪が崩れて全員川に落ちていたかもと考えると、震えが来る位恐ろしかったのを覚えています。これは自然を甘く見ると大変な事になる。それもここは北海道の山奥。都会暮らしの我々なんかひと溜まりも無いと感じました。この事があって私は自然という物の恐ろしさを肌で感じ、ある意味用心深い人間になったと思っています。本当に我々が皆、もし川に落ちてしまったら恐らく誰とも連絡が出来ず、まだ冬の冷たい川に落ちれば間違い無く凍死でしょう。まだ旅行は始まったばかり。この晩も夜行列車の予定でした。おそらく異変に最初に気がつくのは翌日宿泊予定だった帯広のYHの人。翌日の夕方まで気づかれない可能性があったのです。考え過ぎかもしれませんが、想像するだけでも恐ろしい。自然を舐めてはいけないと思った教訓となりました。因みにこの時の写真は、勿体無い記録1に書いてありますが、フィルムが切れてしまって喪失してしまっています😱。

二つ目はぶらりと撮影に行った時の話です。この時は都心に近い所を走る旧型電車を撮影しに、カメラ一つ持ってやって来ました。ここは既に何回も来た事があり、今回も都心部では無くちょっと山間部に入った所で撮影しようと思ってました。そしてある駅で降りてぶらぶら、お目当てのトンネルがある切り通しの場所へ向かいました。するといつの間にかトンネルが新しく出来ていて電車はそちらの新線を走っている事に気がつきました。

という事は、今までの旧線はどうなったのだろうと撮影そっちのけで見に行ってみると、線路は付け替えられて完全に分離されていました。要するにこの線路には電車がやって来る事は無いのです。線路も錆びておらず、まだまだ付け替えられて数日といった感じに見えました。私はこの時すかさず「トンネルを歩いてみようか」と思いました。電車が通る事も無く危険や迷惑を掛ける事はありません。また隣の駅まで行く近道にもなります。さっそく旧線を歩いて行きトンネルの前に立ってみました。

このトンネルは真っ直ぐで、向こう側に小さく出口が見えました。見た感じも500mも無い感じです。歩いても5分位、それなら危険も無さそう。明るさだって向こうの出口が見える距離なのだから大丈夫だろうし、つい最近まで使っていたのだから安全面や衛生面も問題無さそうです。トンネルを歩くなんて初めての経験です。それならと、1人でトンネルに入って行きました。バラスト(敷石)に脚を取られないように枕木の上を一つ一つ歩いて行きます。この時はまだ早春、それでも暖かい日でしたがトンネルの中はひんやりとした感じです。

まだ入口近くは光が届き足元もしっかり見えて歩くのには問題はありませんでした。この路線は10年位前まで貨物列車にSLが使われていた事を記事を読んで知っていました。このトンネルもSLが走っていたのかなあ、などと思いながら歩く気分は上々。壁面にSLの煤など残っていないかな〜などと思いながら最初はご機嫌でした。しかし中は思ったより暗く、そしてトンネルの中は結構風が通り抜けます。進んでいくうちに段々と嫌な気持ちになって来ました。早く出たいと思うようになってきましたが、中々出口が近づいて来る感じがしません。

そのうちに足元が殆ど見えなくなって来ました。トンネルの入口と出口は小さいけどしっかり明るく見えるのですが、その光が届かないようで自分の手や脚も見えなくなって来ました。今のような携帯電話なら灯りを付けて歩く事も出来ますが、カメラ一つでトンネルの中ではどうしようもありません。自分の周りは真っ暗になり、歩く事もおぼつかなくなって来ました。トンネルの中というのは何とも言えない雰囲気があります。急に怖くなり、ちょっとしたパニック状態になってしまいました。行く前には、こんな事になるとは想像もしなかったのです。

心を落ち着かせ、枕木の足の感触を頼りに一歩一歩、手探りならぬ足探り状態で進みます。こんな時にあの常紋トンネルの話を思い出したりします。このトンネルはそんな事は無いのかなと思うと、本当に怖くなって来ました。今でこそ廃線跡をハイキングコースにしてトンネルも歩ける所がありますが、明かりがしっかりあるから歩けるのです。そして一歩一歩、必死で歩きました。数分間が本当にとても長く感じ、本当に出口が遠く感じました。

そして何とか足元に光が届き始めます。少しずつ枕木や線路が見えて来ました。やっと歩く速度が元に戻り、ようやく出口に来れました。トンネルから出た時は思わずホッとして暫く線路に座り込みました。正直止めておけばよかったと思いました。これが少しでもカーブして出口や入口が見えなかったら本当に危険だったと思いました。思いもよらなかったトンネルの暗さに、もう二度とこんな事はしないと思ったのでした。この時、いつも行っている慣れている場所とは言え、舐めて掛かると大変な事になるという教訓を学びました。

今書いてみるとそれ程大した事なく、そして少しオーバーな位な教訓ですが、その時は本当に恐ろしい位の体験だったのです。これもその後の人生において無茶な事をしなくなった大切な経験です。本当に鉄道には色々と頭が下がる思いです。

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