前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

184.鉄チャン旅行の勿体無い記憶.7

次は1976年9月の京阪100年記念列車旅行です。国鉄は、1972年に鉄道100年を記念して京都の梅小路機関区を蒸気機関車館として開設、そして十数両のSLを保存しました。このイベントは、そのSLを使って京阪間の鉄道開通100周年の記念列車を走らせるというものでした。このイベントはその後悲劇的な結末となり、今後のSLの保存活動に暗雲を漂わせた大事件になりました。

この情報を掴んだ我々は、当然このSLを撮影する計画を立てました。大井川鉄道のような小型のSLでは無く、北海道での引退間近の時は貴婦人という愛称で親しまれた中型の部類のSLです。当時の芸能アイドルがこの同型のSLが牽く列車を乗り鉄をした番組もあり、一般にも認知されたSLです。北海道では中々いい写真が撮れずにいたので、新しく買ったカメラでリベンジする為に、行く前から興奮状態でした。高校になると当時は皆アルバイトは当然。私もアルバイトをして小金を貯め、この旅行に備えました。しかし大井川鉄道に行って間もない事もあり、また運転日の9月初旬には給料が間に合わず、またしても貧乏旅行になってしまいました。

なのでまた、夜行で行って夜行で帰るという宿泊費を浮かせた強行スケジュールを取り、出掛ける事となりました。当時の東海道方面の旅行と言えば、東京を夜11時頃出発する大垣夜行と言われた各駅停車が有名で、私と同世代の方でしたら乗った方もいるのではないでしょうか。初めてこの347Mに乗り、これで延々と京都まで各駅停車を乗り継ぎ、到着は翌日の朝9時頃。SLは10時頃の発車でしたから十分間に合う計算でした。しかし、寝不足の怠い身体で京都駅に着くと、そこは既に修羅場状態。出発ホームはもちろん向かいのホームも人が溢れて、とても撮影なんて出来る状態ではありませんでした。こんな場面は経験した事が無く、殺気立っている現場には身の危険も感じました。まだ高校生ながら、何か事故でも起きなければいいが、と思ったのを覚えています。それでも何とか出発シーンを撮れた我々は、その後念願の梅小路蒸気機関車館に行きました。途中、東本願寺西本願寺の前を歩き、夕方時間があったら少し見学でもしてみるかなどと考えながら向かいました。一応この頃は、北海道の反省から観光する事も少し考えるようにはなっていました。そして、そこであまり時間を取れませんでしたがSLを堪能し、その後、戻ってくる列車を撮るべく計画していた撮影場所へ向かいました。

その川の土手沿いは、これまた既に大勢のファン達が詰め掛けており、ここも修羅場状態。何とか撮影場所を確保し、後はやって来るのを待つだけ。しかし予定の時間になっても列車はやって来ません。次第に周りもザワザワし出しました。日が傾き初め、これは何かあったのではないかとファン同士話し出します。当時はケータイも無く情報が無い現場ではただ待つ事しか出来ませんでした。すると向こうの方からパトカーが一台やって来ました。そして「列車は事故で運転を取りやめました」とのアナウンス。辺りに響く「え〜〜〜!」の叫び声、続いて「何だよ〜」やら「ふざけるな〜」の怒声。暴動でも起きるのでは無いかと思う位の騒乱状態でした。

その後はトボトボと駅まで帰り、既に周りは夜です。観光する時間は既に無く、食事をしたら各駅停車を乗り継ぎ東京まで帰らないといけません。その晩は京都駅のどこかの食堂で腹ごしらえをして、出発までの時間を潰していました。そこで今日の事故のニュースを報道していました。それを見て何ともやるせない思いをしたのを覚えています。

東京には早朝に着き、連夜の夜行でぐったりして家に到着。私の家は自営業なので、いつもは早く起きない家族なのにこの日の朝は起きていて、出迎えるように皆、集まってきました。そして、お前が轢かれたかと思ったとの第一声。昨日のニュースを見ていて心配していたとの事。安心したのか続けて、京都まで行ってそれだけで帰って来たのかとか、金閣寺清水寺は行ったかとか、色々聞いてきましたが、最後には決まり文句の「京都まで行って、勿体無い〜」で終わりました。この時は貧乏旅行ながらも資金的にはまあまあ余裕はあったのですが、この事故の為に、時間とその気力が無かったのです。しかし、その後も京都は旅行の途中で何度か寄りましたが、どうも修学旅行で見たからいいやと素通りする事が多く、未だに個人的にじっくり行った事はありません。妻は個人で行ってとてもいい所だったからぜひまた行きたいと言っているので、そのうちに行く機会があると思います。

京阪開通100年の記念列車。すごい人なのが分かると思います。この後に悲劇が待っていたのでしたf:id:x-japanese:20230114163020j:imagef:id:x-japanese:20230114163104j:image