前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

156.私の夫婦でゴルフ体験記21

外に出ると、受付の混雑が嘘のように練習グリーンの辺りはそれ程人はいませんでした。少し妻も落ち着き、そしてスタートです。カートでティーグランドに向かうと、何となくうっすら思い出が蘇りました。こんもりした丘を越えて下って行くと、ティーグランドがありました。コースは打ち下ろしのいい感じのミドルホールです。そしてそこに立つと当時の事が思い出されました。当時の私はまだまだボールを前に飛ばす事さえ儘ならない技量でした。当然第一打はミスショット。それを見て周りの上司や先輩は、「あーあ」とか「カッコ悪いぞ」とかの揶揄い半分の声をあげていました。直ぐに追っかけて第2打を打ったところでしっかりと当たる訳も無く、またゴロゴロの球。後ろからは「早くしろ〜」と笑い声。今で言えばイジメかと思うようなシチュエーションです。何でこんな高い金払ってカッコ悪い思いや恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだと、泣きそうな感じでプレーしていたのを思い出しました。「あんな感じで毎回馬鹿にされたり揶揄われたりされたら、そりゃトラウマになるよな〜」と思いました。この辺りに自分の「何か」があるような気がして、それを探すべくプレーをしようと思いました。

私の第一打はしっかりと当たり、まずはあの時のリベンジが出来ました。しかし妻はまだ緊張を引きずっているのか、珍しくドライバーをミスショットしました。ドンマイと声を掛けながらも、あの時の自分を思い出してしまいました。これは妻を守ってあげないとと思い、後続組が来る前に打たそうと思いました。その後は早く早くと妻を急かしてしまい、妻はその度にダフったりして、このホールは私はボギーで上がれましたが、妻はダブルパー。その顔は私に向かって「また始まった」という無言の抗議のようでした。続く軽く打ち上げの池越えのショート。当時の妻はまだ池は苦手で、打つ前から参っていました。前の組がここはトラブルだったようで、少し待つようになりました。すると後続組がやって来ました。こうなると、もう妻を何とかしないととバタバタしてしまいました。前の組が上がると、私はルーティーンもそこそこに直ぐに打ちました。幸い池を越えグリーン手前に落ちて、ツーオンは大丈夫そうでした。続けて私が妻に早く打つように急かしました。妻は案の定シャンクして、ボールは池は越えましたが、グリーン手前の遥か右の方に行ってしまいました。私はダボで上がりましたが、妻はここでも7の大たたきをしました。そして妻が爆発しました。

「何でそんなにカッコつけるの?別に下手だっていいじゃない!後続組に見られたっていいじゃない!何か言ってたって迷惑かけてなきゃいいじゃない!私はそんなの全然平気!」。その怒りように私はビックリしました。とりあえずカートに乗って次のホールへ向かいました。妻の怒りは収まりません。私も妻の事を考えてやった事だと説明したのですが、「何であなたはそんなにカッコ悪い事を嫌がるの?プロじゃないんだから、多少恥かくくらい何なの!そんなにカッコつけないで!」続けてと言われました。私はかなりショックを受け何も言い返せませんでした。その動揺が収まらず、次のホールはドライバーをトップしてしまいました。私はまたドタバタし出しました。そこにまた妻が「それがあなたの実力なんだから仕方無いでしょ?実力以上の事を周りに見せて何になるの?実力も無いのにカッコつけたってしょうがないでしょ?」と言いました。

まさにその通りだと思いました。実力以上にカッコよく見せたい。恥ずかしい自分を見られたく無い。その時、まさにこれが探していた自分の「何か」だったんだと思いました。自分は所謂単なる「ええかっこしい」なんだと思った瞬間、電気が走るようなショックを感じました。その後は妻は言い過ぎたと思ったのか、私に向かって「落ち着いてやれば大丈夫、先生のルーティーンを思い出して」と言ってくれました。ハッと我に返り、レディスティーまで飛んでないボールの所に行きました。そしてどっしり構えルーティーンから入り内から外を意識して素振り。そして打つとしっかり飛んで行きました。これには何かが分かったような気がしました。その後は妻のティーショットです。妻も落ち着きを取り戻し、ルーティーンから入り素振り、そして打ちました。ボールは見事に真っ直ぐ飛んで行きました。そして妻は「別に調子がいい時だって悪い時だってある。いいホールもあれば悪いホールもある。一喜一憂しない事だね🎵」とまるでベテランのプレーヤーみたいな事を言って笑いながらカートに乗りました。私もその通りだと思いました。

このホールが始まるまでは、妻に言われ放しで、私もちょっと頭に来て言い返してやろうと思ってました。しかし、妻のこのベテランみたいな言葉を聞いて「よく言うよ」みたいな、逆にそれがすごく面白く感じて怒るのもバカバカしくなり、そして何か吹っ切れたような気分になって、その後はいつものようにプレーする事が出来ました。上がってみるとスコアは100ちょうど。自分のあるがままの実力で、背伸びする事も無くプレーする事を意識しながらやってみた結果のこのスコアです。妻の「いい時だって悪い時だってある」という言葉は私の心ににグサリと突き刺さった感じがしました。

岡部チサンカントリークラブの砲台グリーンから景色f:id:x-japanese:20211115093624j:image