前立腺癌、重粒子治療体験記

前立腺癌と重粒子治療について、私の経験をお伝えして行きたいと思います。

25.さまざまな治療法からの選択

担当の方は、まだ若い女性の方でした。あとで聞いたところ、以前は看護師の仕事をされていたようで、癌の患者さんと直に寄り添い力になりたいと思ってこの仕事を選んだとの事。病院だと中々寄り添う時間が取れず、随分やるせない思いをしたという方でした。挨拶もそこそこに、まず今までの経過と現状のヒアリング、その後自分達の希望、将来像等を聞いてくれました。自分としては男性の大人としての尊厳を失いたく無い事が一番の希望であり、今の病院の先生は全くこちらの希望などお構いなし、治る事が一番の目的なのだから、手段は何でも構わないというスタンスのように感じて、とても悲しいと言う事を訴えました。担当の方もこの状況が癌患者を不安にさせていると共感してくれました。その後、治療方法の説明に移りました。我々は事前に治療法の情報収集や勉強をしていたので、担当の方の説明は大方理解出来ました。数種類の方法を説明してくれ、その後遺症について等説明してくれた後、担当の方は自分のニーズに合うのはやはり放射線治療だろうと提案してくれました。そこで、妻が初めて話出しました。妻も相当調べていたらしく、「放射線なら重粒子がいいと思うがどうか」と担当の方に確認しました。担当の方は、時間的余裕があるのならいいと思うとの回答。重粒子はとにかく待たされるとの回答でした。理由は、この年の春から前立腺癌等複数の治療が保険適用になったので、一気に申し込みが増えたとの事。担当の方はその後、重粒子治療のメリット、デメリットの説明もして下さり、私達はここで治療の方向性が見えて来て、一筋の明かりが灯ったように感じました。治療するには自分の希望、治療後をイメージする目標がしっかりしていないといい治療はできないと、この時初めて感じました。そして今できる治療方法の情報を整理し、自分の希望が叶う治療はその中のどれなのかを、しっかり見定める事。これが大事なのだと初めて実感しました。規定の時間はあっという間に過ぎ、とても中身の濃い時間を持てて私達は大満足でした。私達は担当の方にお礼を告げました。その時担当の方は、我々がしっかり治療法について勉強して来た事にとても感心したと言ってくれました。きっといい治療が出来るとも言ってくれました。私はその言葉がとても嬉しく感じました。今までの自分の逃げ腰な感情は陰を潜め、癌に立ち向かうといった能動的な感情が湧き出してくるような、その言葉にからそんな元気を貰った気がしました。

伊勢志摩の湾から見た日の出f:id:x-japanese:20210316074446j:image